2.白鯨
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 23:58 UTC 版)
「A - A'」の二部形式。Leung(2005)は、全音音階に含まれる3音からなる動機がSEAモチーフとともに重要な役割を果たしていると分析しており、これを「鯨の動機」と名付けている。その原型となる音列(下の譜例の1.)は「夜」の練習番号🄴で登場しており、「白鯨」の冒頭では音の並びを入れ替えた譜例2.の形で提示され、その後、譜例3.の形で使われている 上の譜例3.の鯨の動機は、練習番号🄱以降においてSEAモチーフに接続される形で使われ(下の譜例。この節では「海+鯨の動機」と表記する。)、曲の最後でのみ、単独の形で演奏される。 区分練習番号SEA特記事項末尾の休止A 2回 伴奏パートによる、鯨の動機(ハ-変ロ-ホ)をベースラインとする短い前奏に始まる。前奏の最後の音が伸ばされた4~5秒後にアルトフルートが登場しSEAモチーフ(ハ-嬰ハ-嬰ヘ)による旋律を奏でる。また、伴奏の十六分音符にもSEAモチーフ(ロ-ハ-ヘ)が含まれている。 2秒 🄰 1回 アルトフルートが再びSEAモチーフ(ハ-嬰ハ-嬰ヘ)による旋律を奏でる。 🄱 1回 分散和音に乗ってアルトフルートが三度下降する動機を繰り返し、続いてアルトフルートが三十二分音符による「海+鯨の動機」(嬰ハ-ニ-ト / ロ-ヘ-嬰ハ)を奏でる。その後 Poco piu mosso でテンポが四分音符=約60に上がり、鯨の動機は「ヘ」と「嬰ハ」の三全音のトレモロとなってクレッシェンドし、B♭m7の和音による頂点を経て静まる。なお、このセクション末尾の休止は『海へII』でのみ設定されている。 1.5~2秒※ 🄲 1回 アルトフルートの旋律の中に三十二分音符による「海+鯨の動機」(嬰ト-イ-ニ / 嬰ヘ-ハ-嬰ト)が含まれている。その後の頂点付近における伴奏は、『海へ(I)』ではギターによる十六分音符の反復であるのに対し、『海へII』と『海へIII』ではハープのビスビリャンド(bisbigliando、急速な音の反復)になっている。 (🄲) 2回 アルトフルートの無伴奏のソロ。パッセージの中には三十二分音符による「海+鯨の動機」(ハ-嬰ハ-嬰ヘ / 変ロ-ホ-ハ)が含まれる。 A' 🄳 2回 冒頭の伴奏の音型が再現し、やがてアルトフルートの無伴奏によるカデンツァ的なパッセージとなる。このパッセージの中にはSEAモチーフ(イ-嬰イ-嬰ニ)が2回含まれている。 🄴 1回 練習番号🄱における三度下降する動機と「海+鯨の動機」(嬰ハ-ニ-ト /ロ-ヘ-嬰ハ)が再現され、s最後は鯨の動機(ロ-ヘ-嬰ハ)が単独で2回奏でられて静かに終わる。
※この「2.白鯨」の解説は、「海へ (武満徹)」の解説の一部です。
「2.白鯨」を含む「海へ (武満徹)」の記事については、「海へ (武満徹)」の概要を参照ください。
- 2.白鯨のページへのリンク