3つのイメージ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/27 07:39 UTC 版)
ウォルツは1959年に出版された博士論文『人間・国家・戦争ー国際政治の3つのイメージ』において、普遍的な戦争の原因を人間、個々の国家の構造、国際システムの3つに分けて考察した。そして、それらを第1・第2・第3イメージと名づけた。 戦争の原因はなにか 第1イメージ:人間の本性と行動。戦争は自己中心主義、方向性を誤った攻撃的衝動、愚かさの結果なのである。 第2イメージ:国家の国内構造。政治体制や国内構造が軍事力の形態やその使われ方、対外行動一般を決定する。 第3イメージ:無政府状態な国際構造。無政府状態において、国家は自分自身の力で安全を確保しなくてはならない。国家間での利害関係は自動的に調和されず、紛争が武力によって解決される可能性は存在する。 ウォルツは3つの中でも、第3イメージが最も重要であるとして、国際関係の因果関係を明らかにするには国際システムの構造(International structure)が国家行動に与える影響を仮説化することが必要であると指摘した。ウォルツのネオリアリズムが構造的リアリズムと呼ばれるのはこのためである。ウォルツは国際構造の特徴を主権国家より上位に位置する権力の不在、つまり無政府状態であるとした。無政府状態において、どのような政治体制を持つ国家であっても、好むと好まざるとに関わらず、安全保障を追及しなければならない(自助システム)。国家を保護してくれる公的機関、上位権力が存在しないからである。ウォルツはルソーの「鹿狩りの寓話」を用いて自助システム下での国際協力の困難さを説明した。そして、国家は相互不信から他国より少しでも多くの「相対利得(relative gains)」を追求するようになる、と指摘した。 同様のことは『世界政治における米国の戦略』において、ニコラス・スパイクマンが「敵との力がバランスしているときではなく、敵よりわずかに強いときに安全保障が得られる」と述べており、後にモーゲンソーが「余分の安全(margin of safety)」と名付けたものである。
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