髄液圧
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/28 06:51 UTC 版)
腰椎穿刺をして最初にわかるのは脳脊髄液の圧である。これは穿刺するときの針にあらかじめつないでおいた脳圧モニターが測定する。患者の姿勢によって穿刺部の圧は変わる。患者が上体を起こして座った姿勢だと、頭蓋内と脊柱管に入った脳脊髄液の重みが穿刺部にかかり、測定される圧は高くなる。普通は患者を横向きに寝かせ、腸骨稜と腰椎の棘突起が見分けやすいように背中を軽く曲げさせた状態で穿刺する。圧が上がっていれば上に述べたような疾患を疑う。液が勢いよく流れ出るなど、圧が高そうなときは脳ヘルニアの恐れがあるので、モニターの表示を待たず素早く液を止めて針を抜く。圧が低ければ脱水や髄液漏を疑う。検査中に患者が咳などをして姿勢が変わると、圧が変わることがある。 クエッケンシュテット試験 (Queckenstedt test) 圧に関する検査としてクエッケンシュテット試験がある。これは頭蓋内の静脈とクモ膜下腔、それに脊柱管内のクモ膜下腔が正常に交通しているかどうかをみる試験である。脳脊髄液の圧をモニターしながら両側の頚静脈を静脈圧よりも強く圧迫すると、正常なら10秒以内に圧が100 mmH2O以上上がる。そして圧迫をやめたときにはすぐ元に戻る。この現象は、頚静脈の圧迫によって頭蓋内の静脈が怒張するので、頭蓋内圧が上がるのにしたがって腰椎部での脳脊髄液圧も上がるというものである。頭蓋内の静脈や脊柱管の途中に閉塞があると、こうした一連の流れが妨げられるので、圧迫しても圧があまり上がらなかったり、圧迫をやめてもなかなか戻らなかったりする。この異常をクエッケンシュテット現象陽性と呼ぶ。特に静脈の閉塞があるとき、異常がある側の頚静脈を圧迫しても脳脊髄液圧は上がらない(圧迫よりも頭蓋寄りの静脈に変化が起きないため)が、正常な側の頚静脈を圧迫すると圧が上がる。これをTobey-Ayer徴候と呼ぶ。クエッケンシュテット試験は脳圧を意図的に上げる試験なので、脳脊髄液圧がはじめから高いときは脳圧亢進症状を増悪させる危険が大きく、してはいけない。
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