頭骨の機構
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/02 02:25 UTC 版)
タルボサウルスの頭骨は2003年に初めて完全に記載された。研究者はタルボサウルスと北アメリカのティラノサウルス科の重要な相違点を記しており、その多くは噛む際の頭骨にかかる負荷の処理に関連している。上顎が物体を噛む際、力は上顎の歯を持つ主要な上顎骨を介して周囲の頭骨へ送られる。北アメリカのティラノサウルス科では、この力は上顎骨から鼻先の癒合した鼻骨へ向かい、鼻骨は骨の支柱により涙骨と後方で固く繋がっていた。これらの支柱が骨を互いに固定しているため、力は鼻骨から涙骨へ送られたと示唆されている。 タルボサウルスには骨の支柱がなく、鼻骨と涙骨の繋がりも弱かった。その代わりタルボサウルスは上顎骨の後方への突起が大きく発達し、涙骨で構成される鞘の内側に合致していた。この突起は北アメリカのティラノサウルス科では薄い骨の板になっている。大きな後方への突起から、タルボサウルスでは上顎骨から涙骨へより直接的に力が送られたことが示唆されている。また、タルボサウルスの涙骨は前頭骨と前前頭骨に固定されていた。上顎骨、涙骨、前頭骨、前前頭骨の発達した繋がりにより、上顎全体が強度を増していた。 タルボサウルスと北アメリカの親戚におけるもう一つの大きな相違点は、タルボサウルスの下顎がより強固であることである。北アメリカのティラノサウルス科を含め多くの獣脚類で下顎骨後方と歯骨前方が幾分柔軟であったが、タルボサウルスは角骨の表面の隆起からなる固定機構を持ち、歯骨の後方で正方形の突起と関節していた。 タルボサウルスの強固な頭骨は、後期白亜紀の北アメリカの大部分には生息しなかった、ネメグト層から産出する巨大なティタノサウルス科竜脚類を狩るための適応であるという仮説もある。また、頭骨機構の相違点はティラノサウルス科の系統も左右する。タルボサウルス型の頭骨内関節はモンゴル産のアリオラムスにも見られ、ティラノサウルスではなくアリオラムスがタルボサウルスに最も近縁であることが示唆されている。それゆえ、タルボサウルスとティラノサウルスの類似点はその巨大な体躯に関連して平行進化で独立に発達した可能性がある。
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