頭部と頸板
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 07:44 UTC 版)
他のアースロプレウラ類であるミクロディケンプレクス(ほぼ完全)とエオアースロプレウラ(大顎のみ)から確定的な頭部構造が発見されるのに対して、本属の頭部に関しては未だにほぼ不明で、かつて頭部と解釈された構造はほとんどが後に別物("顎肢"はウミサソリの脚由来の顎基断片、"丸い頭部"は頸板、後述)の見間違いと見直された。 最初の三葉状背板の直前には、やや小さく、丸みを帯びた1枚の外骨格がある。この外骨格は左右に1対のくぼみがあり、表面に大小のこぶが生えて、後縁はやや盛り上がって1本の溝に横断される。21世紀以前では、この外骨格は「丸い頭部」と解釈され、左右1対のくぼみは元々眼が付く所だと推測された。しかし21世紀以降の再検証では、これは頭部ではなく、むしろ頸板(collum、ヤスデの頭部直後に特化した胴部最初の背板)と見直されるようになった。他のヤスデのように、(不明の)頭部は元々この頸板の下にあり、ミクロディケンプレクスのように上からほぼ完全に頸板に隠されたと考えられる。頸板左右1対のくぼみは眼などではなく、むしろミクロディケンプレクスに見られるような、頭部から出張った正体不明のラッパ状の突起物に対応した可能性がある。Briggs & Almond 1994 ではアースロプレウラの(当時ではまだ頭部と解釈された)頸板のくぼみから丸みを帯びた構造体が見つかり、これが前述のような頭部由来の突起物ではないかと考えられる。Kraus & Brauckmann 2003 と Kraus 2005 では、頭部由来の可能性がある断片的な化石標本をいくつか記載された。これらの標本によると、アースロプレウラの頭部は両縁に現生ヤスデに似た折り返し構造と触角の付け根があり、表面は細かなこぶが密生し、頂点(vertex、頭頂部に当たる部分)は滑らかな楕円形である。 眼の有無や頭部付属肢(触角・大顎・小顎/顎唇)の形態はほぼ不明である。触角は完全に不明だが、少なくとも糸状ではなかったと考えられる(ヤスデの触角は7節の棍棒状で、十数節以上の数珠状や糸状ではない)。大顎の基部と思われる痕跡は、前述の頭部由来の可能性がある断片標本の1つ MTB 636-7 に見られるが、確定的ではない。
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