非有界作用素のスペクトル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/15 14:14 UTC 版)
「スペクトル (関数解析学)」の記事における「非有界作用素のスペクトル」の解説
作用素がもはやバナッハ環 B(X) の要素でないようなバナッハ空間 X 上の非有界作用素についても、スペクトルの定義を拡張することができる。有界な場合と同様に考える。複素数 λ は、作用素 T − λ I : D → X {\displaystyle T-\lambda I\colon D\to X} が有界な逆作用素を持つなら、すなわち S ( T − λ ) = I D , ( T − λ ) S = I X {\displaystyle S(T-\lambda )=I_{D},\,(T-\lambda )S=I_{X}} となるような有界な作用素 S : X → D {\displaystyle S\colon X\rightarrow D} が存在するなら、レゾルベント集合、すなわち線形作用素 T : D ⊂ X → X {\displaystyle T\colon D\subset X\to X} のスペクトルの補集合であるという。 複素数 λ は、この性質が成り立たないなら、スペクトルに含まれる。スペクトルは、有界の場合とまったく同様に分類することができる。 一般に、非有界作用素のスペクトルは空集合を含む複素平面の閉部分集合である。 定義からただちに、有界作用素としての S が逆作用素を持たないことが導かれる。領域 D は X の真部分集合であってもよいので、表現 ( T − λ ) S = I X {\displaystyle \,(T-\lambda )S=I_{X}} は、Ran(S) が D に含まれる場合にのみ意味を持つ。同様に、 S ( T − λ ) = I D {\displaystyle \,S(T-\lambda )=I_{D}} は D ⊂ Ran(S) であることを意味する。したがって、λ が T のレゾルベント集合に含まれることは、 T − λ I : D → X {\displaystyle T-\lambda I\colon D\to X} が全単射であることを意味する。 この逆は、T を有界とする仮定を加えれば成り立つ。閉グラフ定理により、T − λ: D → X が全単射なら、この(代数的)逆写像は必ず有界な作用素となる(X の完備性が閉グラフ定理の適用に必要であることに注意されたい)。したがって、有界な場合と異なり、複素数 λ が T のスペクトルに含まれる条件は、純粋に代数的なものとなる。すなわち、閉じた T に関して、T - λ が全単射でないならば、λ は T のスペクトルに含まれる。
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