限定詞なしの名詞句
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/17 21:44 UTC 版)
英語を含むいくつかの言語では、名詞句を“完成”させるために限定詞が必要な場合がある。よって、必要な限定詞がすでに名詞句に付いているかどうかで、統語論上の構造に差異が生じる。例えば、the big houseとbig houseは理論上、構造が異なる(後者が前者の内部に位置する)。 しかし、I like big houses.のように、限定詞が不要な文もある。そういう場合、ゼロ冠詞(Øと表記)が存在するという解釈が可能である。英語における具体例については、英語の冠詞#無冠詞を参照。 初期のXバー理論によれば、the big houseは“名詞句”(noun phrase、略してNP)、big houseはNバー(NまたはN’)と呼ばれる。Nバーの内部に別のNバーが含まれることもある。例えば、Here is the big house.という文では、houseとbig houseがともにNバーであり、the big houseが名詞句である。一方、I like big houses.(ゼロ冠詞)という文では、houseとbig housesがともにNバーであり、Ø big housesが名詞句となる。 つまり、「限定詞(ゼロ冠詞含む)+Nバー=名詞句」だと考えられていたが、その後、「主要部限定詞+名詞句=限定詞句(determiner phrase、略してDP)」だとする考え方も生まれた。それによれば、Here is the big house.にはthe big houseという限定詞句が含まれており、さらにその中にbig houseという名詞句があることになる。 限定詞句の中に名詞句が含まれるという解析法は、DP仮説(DP hypothesis)と呼ばれる。1990年代前半に誕生したミニマリスト・プログラム(英語版)においては、その黎明期からDP仮説が優先されている。機能語である限定詞を主要部とする構造は、補文標識(英語版)(that節のthatなど)を主要部とする定動詞節(finite clause)の構造に近い。しかし、DP仮説はミニマリスト・プログラム以外の理論ではほとんど支持を得ておらず、依存文法においてもNPの中に限定詞が含まれるという考え方が主流である。
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