限定承認の手続
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/11 15:07 UTC 版)
限定承認とは、相続人にいわば相続財産承継において有限責任(逆に言えば単純承認は無限責任である)という恩恵をもたらすものであるから、相続債権者との利害調整が必要であり、民法では926条から937条までに詳細な手続が規定されている。 相続人が家庭裁判所に限定承認の申述を行った後は、5日以内にすべての相続債権者および受遺者に対し、2か月以上の期間を定めて公告を行い(927条)、知れている債権者には個別に催告を行う。 公告期間満了後、相続債権者に、それぞれの債権額の割合に応じて弁済をする(929条)。 その後、受遺者に弁済をする(931条)。 相続債権者・受遺者に弁済をするために相続財産を売却する必要があるときは、競売(民事執行法195条の規定により、担保権の実行としての競売の例による)による(932条本文)。 ただし、相続財産の全部または一部について、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従い価額を弁済することにより、競売を止めることができる(932条ただし書)。 これらは相続放棄の規定と比べて煩雑であり、かつ限定承認をした者にさまざまな義務と事務処理を強いる内容になっているので、限定承認が好まれない原因の一つとなっている。 一方で、相続財産のうちに、相続人がどうしても手に入れたい財産、たとえば自宅であるとか、事業のために必要な財産が含まれるとき、相続債権の弁済が相続人の固有財産に食い込むリスクをおかすことなく当該財産を手に入れることができる(上述の932条ただし書の手続を利用)というのは、限定承認の主な利点の一つである。
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