降着円盤の物理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/16 17:21 UTC 版)
降着円盤の理論モデルは、まず1940年代に基本的な物理原理から導出された。観測と一致させるためには、これらのモデルは角運動量の再分配を行うための未知のメカニズムの存在を必要とした。物質が内側へ落下するためには、重力エネルギーだけではなく角運動量も失う必要がある。円盤全体の角運動量は保存するため、中心に落下した質量が失った角運動量は、中心から遠ざかった質量が角運動量を得ることによって埋め合わせられなければならない。言い換えれば、物質が降着するためには角運動量は外側へ「輸送」されなければならない。レイリー条件によると、降着円盤が ∂ ( R 2 Ω ) ∂ R > 0 {\displaystyle {\frac {\partial (R^{2}\Omega )}{\partial R}}>0} の条件を満たす時は円盤は安定な層流状態となる。ここで Ω {\displaystyle \Omega } は流体要素の角速度、 R {\displaystyle R} は回転の中心からの距離である。この状態では、角運動量輸送を起こすための流体力学的なメカニズムが存在しないことになる。 一方では、粘性応力によって最終的に物質は中心へと輸送され、温度が上昇して放射によって重力エネルギーの一部が失われることは明白である。その一方で、円盤の外側への角運動量の輸送を説明するためには、物質自身の粘性だけでは不十分である。このような角運動量の再分配のメカニズムを担っているのは乱流に増幅された粘性であると考えられていたが、その乱流自身の起源が何であるかはまだ理解が進んでいない。標準的な α {\displaystyle \alpha } 粘性モデル (後述) では、円盤内の乱流渦による実効的な粘性の増加を記述する、調整可能なパラメータである α {\displaystyle \alpha } が導入されている。1991年の S. A. Balbus と J. F. Hawley による磁気回転不安定性(英語版) (magnetorotational instability, MRI) の再発見に伴い、重いコンパクトな中心天体の周りにある弱く磁化した降着円盤は非常に不安定であり、これが角運動量の再分配を起こす直接的なメカニズムであることが提唱された。
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