閏秒挿入の理由についての間違った理解
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/27 21:49 UTC 版)
「閏秒」の記事における「閏秒挿入の理由についての間違った理解」の解説
閏秒の必要性や閏秒挿入の理由については、次のような説明がしばしば見られる。 地球の自転速度が徐々に遅くなっているために、これと国際原子時との差を調整するために閏秒を挿入している。 頻繁に閏秒が挿入されてきたのは、地球の自転が徐々に遅くなっており、この遅れを調整するためである。 以上の説明は、間違った理解に基づくものである。 正しくは以下のとおりである。 セシウム遷移の9 192 631 770周期を1秒とする国際原子時の歩度は、1750年 - 1892年の間(平均的には、1820年頃)に行われた天文観測からサイモン・ニューカムがTables of the Sunに基づいて計算した秒の長さに基づいて決められた。したがって、1958年当時の地球自転の歩度(86 400.0025 SI秒程度)とは合わなくなっていた。 もし、国際原子時の歩度を、セシウム遷移の9 192 631 770周期ではなく、9 192 631 997周期にしておけば、1972年以降、2回のマイナス(閏秒の削除)と1回のプラス(閏秒の挿入)の3回だけの閏秒の削除・挿入で済んでいたはずである。ただし、仮に1967年時点で9 192 631 997周期にしていたとすると、(9 192 631 997 - 9 192 631 770)/9 192 631 770 = 2.469×10-8だけ、秒の長さを長く定義し直すことになり、1967年までに蓄積されていた様々な物理定数の値を変更する問題が生じていたはずである。 地球の自転が長期的な傾向としては徐々に遅くなる(LODが大きくなる)のは事実であるが、それは1ユリウス世紀につき1.7ms/日 程度の変化(USNOの解説では、1ユリウス世紀につき1.4ms/日 程度の変化としている)の極めて小さなものである。1972年以降の地球自転速度の変化は、上記の遅れによるものではなく、数年ないし数十年周期の、もっと大きく、不規則な変動によるものである。
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