酸素欠乏性多血症
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/18 09:03 UTC 版)
空気の薄い高地での生活、慢性の閉塞性肺疾患や肺胞の異常などによる肺の酸素取り入れ能力の低下、心臓・血管などの異常による血流の不足、異常ヘモグロビン症、赤血球内の2,3-ビスホスホグリセリン酸塩(2,3-BPG)量の低下、常習的大量喫煙の一酸化炭素ヘモグロビン症などでは血液が運ぶ酸素の量が減少し、体組織は慢性の酸欠状態になる。 その結果、エリスロポエチン産出臓器である腎臓(および肝臓)が反応しエリスロポエチンの増産を行い、造血組織がエリスロポエチンの増加に反応し赤血球産出量を増やすことで血液の酸素の運搬能力を高めようとする。この酸素欠乏反応性の赤血球増加が酸素欠乏性あるいは低酸素性の多血症である。 この低酸素状態に腎臓が反応してエリスロポエチン産出を増やし赤血球量の増加をはかって血液の酸素の運搬能力の向上を目指すのが、マラソン選手が行う高地トレーニングである。肥満でも多血症は多く見られる。肥満の為に体が必要とする酸素を十分に取り込めないためであり、また睡眠時無呼吸症候群などでは起床時には低酸素症となるような要因がなくとも睡眠時に低酸素症が起きるために多血症は良く見られる。常習的大量喫煙では、煙に含まれる一酸化炭素がヘモグロビンに結びついて一酸化炭素化ヘモグロビンになり、それは酸素運搬能力は無いので、肺でいくら呼吸しても低酸素状態になる。ヘビースモーカーに多血による赤ら顔が多いのはこのためである。一酸化炭素によるものでなくともヘモグロビンの異常によって赤血球の酸素運搬能力が低下すると同じ機序で赤血球は増加する。 この低酸素反応性の赤血球増加は酸欠の原因が解消されれば(低地への移住や原因疾患の根治、禁煙など)腎臓のエリスロポエチン産出も落ち着き、やがて多血状態も落ち着く。 ただし、低酸素症になる原因が除去できなかったり、あるいは出来ても赤血球寿命は120日と長く自然に赤血球量が低下するには時間がかかる。したがって多血によって血液粘調度が上昇し、高血圧や血栓症リスクが高ければ瀉血で緊急にHtを下げる必要もありえる。
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