配当込みのブラック–ショールズ方程式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/05 15:13 UTC 版)
「ブラック–ショールズ方程式」の記事における「配当込みのブラック–ショールズ方程式」の解説
もし株式に配当が含まれたとしても、ブラック–ショールズ方程式は細部の変更のみで成立する。ここで St で表される株式には配当が存在し、その配当は連続的に支払われるものとする。単位時間当たりの配当利回りを q とする。この時、株価の従う確率微分方程式は d S t = σ S t d W t + ( μ − q ) S t d t {\displaystyle dS_{t}=\sigma S_{t}dW_{t}+(\mu -q)S_{t}dt} となる。ただし、この株式を保有していると配当が得られるので、自己資金充足的なポートフォリオは次の確率積分方程式を満たす。 a t S t + b t B t = a 0 S 0 + b 0 B 0 + ∫ 0 t a s d S s + ∫ 0 t b s d B s + ∫ 0 t a s q S s d s {\displaystyle a_{t}S_{t}+b_{t}B_{t}=a_{0}S_{0}+b_{0}B_{0}+\int _{0}^{t}a_{s}dS_{s}+\int _{0}^{t}b_{s}dB_{s}+\int _{0}^{t}a_{s}qS_{s}ds} あとは全く同様の議論を繰り返すことで次の偏微分方程式が得られる。 r C = ∂ C ∂ t + 1 2 σ 2 S t 2 ∂ 2 C ∂ S t 2 + ( r − q ) S t ∂ C ∂ S t {\displaystyle rC={\frac {\,\partial C\,}{\partial t}}+{\frac {1}{2}}\sigma ^{2}S_{t}^{2}{\frac {\,\partial ^{2}C\,}{\partial S_{t}^{2}}}+(r-q)S_{t}{\frac {\partial C}{\,\partial S_{t}\,}}} 境界条件は配当なしの場合と同一である。この偏微分方程式の解は以下のようになる。 C ( S t , t ) = e − q ( T − t ) S t N ( d 1 ) − K e − r ( T − t ) N ( d 2 ) {\displaystyle C(S_{t},t)=e^{-q(T-t)}S_{t}N(d_{1})-Ke^{-r(T-t)}N(d_{2})} ただし、 N ( x ) = 1 2 π ∫ − ∞ x e − y 2 2 d y , {\displaystyle N(x)={\frac {1}{\sqrt {2\pi }}}\int _{-\infty }^{x}e^{-{\frac {y^{2}}{2}}}dy,} d 1 = log ( S t K ) + ( r − q + σ 2 2 ) ( T − t ) σ T − t , {\displaystyle d_{1}={\frac {\log({\frac {S_{t}}{K}})+(r-q+{\frac {\sigma ^{2}}{2}})(T-t)}{\sigma {\sqrt {T-t}}}},} d 2 = log ( S t K ) + ( r − q − σ 2 2 ) ( T − t ) σ T − t {\displaystyle d_{2}={\frac {\log({\frac {S_{t}}{K}})+(r-q-{\frac {\sigma ^{2}}{2}})(T-t)}{\sigma {\sqrt {T-t}}}}} である。この配当込みのブラック–ショールズ方程式は通貨オプションについても重要な意味を持つ。自国とある外国の間の(自国通貨建て)為替レートを Qt として、Qt が以下の確率微分方程式に従うとする。 d Q t = σ Q t d W t + γ Q t d t {\displaystyle dQ_{t}=\sigma Q_{t}dW_{t}+\gamma Q_{t}dt} γ は定数であるとする。また自国債券価格を Bt 、外国債券価格を Bft として、それぞれ B t = B 0 e x p ( r t ) , B t f = B 0 f e x p ( r f t ) {\displaystyle B_{t}=B_{0}\mathrm {exp} (rt),\quad B_{t}^{f}=B_{0}^{f}\mathrm {exp} (r_{f}t)} と表されるとする。ただし、r と rf はそれぞれ自国の金利と外国の金利を表し、共に定数であるとする。ここで自国通貨建て通貨オプションを自国債券と外国債券からなる自己資金充足的なポートフォリオで複製することを考える。つまり C ( Q t , t ) = a t B t + b t Q t B t f {\displaystyle C(Q_{t},t)=a_{t}B_{t}+b_{t}Q_{t}B_{t}^{f}} である自己資金充足的なポートフォリオ (a, b) を考える。すると、前節と同様の議論から無裁定ならば次の偏微分方程式が成立しなくてはならない。 r C = ∂ C ∂ t + 1 2 σ 2 Q t 2 ∂ 2 C ∂ Q t 2 + ( r − r f ) Q t ∂ C ∂ Q t {\displaystyle rC={\frac {\,\partial C\,}{\partial t}}+{\frac {1}{2}}\sigma ^{2}Q_{t}^{2}{\frac {\,\partial ^{2}C\,}{\partial Q_{t}^{2}}}+(r-r_{f})Q_{t}{\frac {\partial C}{\,\partial Q_{t}\,}}} この式は配当込みの株式を原資産としたブラック-ショールズ方程式における配当利回りを外国金利に置き換えただけの式なので、その解も配当利回りを外国金利に置き換えるだけでよいことが分かる。つまり通貨オプションの理論価格は配当込みの株式オプションの理論価格と同じ形をすることが分かる。
※この「配当込みのブラック–ショールズ方程式」の解説は、「ブラック–ショールズ方程式」の解説の一部です。
「配当込みのブラック–ショールズ方程式」を含む「ブラック–ショールズ方程式」の記事については、「ブラック–ショールズ方程式」の概要を参照ください。
- 配当込みのブラック–ショールズ方程式のページへのリンク