道徳領域と慣習領域
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/13 05:40 UTC 版)
ピアジェらの発達心理学などでは、幼児は既存の規範を順守しようとする権威志向的であり、善悪の道徳観念の理解は後期児童または青年期まで形成されないとしてきた。このような説明に対して近年の研究では、幼児においても権威から独立した道徳を持ちうるとされている。Turielらの領域理論においては、道徳領域、慣習領域、個人領域の3つの独立した領域で幼児の思考は構成されるとする。 道徳領域とは正義や公正などの概念が属し、他者の期待や規則から独立し、また他人からの命令や権威といったものとは無関係に善悪が判断される。 慣習領域では、集団における規則、マナーなどと相対的なものとなり、独立した道徳観念からは思考されない。 幼児はこのような道徳と慣習の領域を区分することができるとされる。 2歳から5歳の児童において、叩く、奪うという攻撃行動は道徳領域において判断でき、片付けない、集団行動に参加しないなどの慣習領域における違反については、2歳は道徳と慣習と区別できず、規則や権威(教師の命令)に左右される。4,5歳になると、規則や権威とは独立して道徳的な判断ができるようになる。Turielは、4,5歳になると、権威志向的に規則を常に順守することから脱し、独立した道徳判断ができるようになるとしている。 また、児童青年期の発達心理学研究においては、6歳から8歳でも言論の自由を普遍的な道徳と理解することができ、権威者が制限することは悪いと判断できる。他方、「敵対する考え方を持つものに対して身体的な攻撃を加えることを唱導する演説」については言論の自由が支持されない場合も6歳から8歳までの児童においては観察された。8歳から11歳までの児童は異なる領域を調整し、言論の自由を支持する傾向にあった。
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