運動技能の学習
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/04 15:57 UTC 版)
ワーキングメモリーや知能が正常であることに加えて、HMは新しい運動技能を学習できることは、運動学習能力が保存されていることを示している(Corkin, 2002)。ミルナーが1960年代初頭に行った実験では、HMは鏡映反転像を見て絵を描く新しい技能を獲得できた(Corkin, 2002)。さらに、コーキン(1968)により、運動学習の能力が温存されていることが示された。この研究では、HMは3種類の異なる運動学習課題でテストされ、3種類ともに完全に学習することができた。HMはある種の問題解決の手続きを学習することが、ハノイの塔課題を用いて示された(Kolb & Whishaw, 1996)。反復プライミングの実験では、HMが非明示的な(意識にのぼらない)記憶を持ちうることを示しており、新しい意味・エピソード記憶を生成できないのとは対照的である(Corkin, 2002)。これらの発見は、運動学習と反復プライミングがエピソードや事実の記憶とは異なる神経的構造に依拠していることを示している;手続的記憶や反復プライミングはHMで切除された内側側頭葉には依拠せず、意味記憶やエピソード記憶は依拠するのである(cf. Corkin, 1984)。HMにおける明示的・非明示的な学習能力の解離は、その神経的基盤とともに、人間の記憶についての我々の理解に重要な貢献をなした:長期記憶は単一ではなく、宣言的・非宣言的なものに分類されるのである(Smith & Kosslyn, 2007)。
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