進化論的な考察
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/30 14:36 UTC 版)
「ピートのパラドックス」の記事における「進化論的な考察」の解説
多細胞生物はその進化において、ある程度癌を抑止するよう求められており、多細胞生物の成り立ちと癌との間には様々な関係が見出されてきた 。体をさらに大型化かつ長寿化させるためには、癌をさらに抑止できなければならない。ゾウのような大型生物ほど癌を回避する適応能力をより身につけていることは、証拠を以って示されている。中程度のサイズの生物がそうした遺伝子を相対的にあまり持っていないのは、その遺伝子がもたらす癌の抑止力という長所が、別の短所(特に多産能力の減退)によって打ち消されるためかもしれない。 癌を抑止するために様々な種が異なったメカニズムを進化させてきた。『セル・レポーツ』誌の2015年1月号に掲載された論文によると、長寿に関係していると見られる遺伝子がホッキョククジラ (Balaena mysticetus) で見つかったという。同時に別の研究チームは、腫瘍の発達を阻止すると見られる多糖をハダカデバネズミで発見した。2015年10月、2つの別々の研究チームは、ヒトや他の哺乳類が1つしか持っていない、腫瘍を抑制するp53遺伝子を、ゾウは20個持っていることを示した。続報によると、保存されたマンモスの DNA にはその遺伝子が14個あったが、ゾウに最も近縁な現存種であるマナティーとハイラックスの DNA には1個しかなかった。これらの研究は、ピートが理論づけたとおり、動物の体のサイズと腫瘍の抑制との間に進化論的な関係があることを示唆する。
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