超分節音
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/18 00:30 UTC 版)
ナンディ語は声調言語であるがこの言語の場合、声調は語の弁別(例: bek /pe̘ːk˦/〈水〉: bek /pe̙ːk˦˨/〈シコクビエ〉)のみならず文法的な関係(主語か目的語か; 詳細は#統語論を参照)にまで関与している。 語の基底形には母音ごとに声調素が見られるが、実際に現れる声調とは異なる場合がある。声調素は高・高下降・低下降・低(/˦, ˦˨ , ˨˩, ˨/)の4種類であるが、実際の発音ではさらに上昇調・中平調([˩˥, ˧])の2種類が現れる場合もある。その詳細は以下の通りである。 高声調は、語頭の長母音上にある場合、上昇調として発音される。例: bek〈水〉/pe̘ːk˦/ → [pe̘ːk˩˥] 低声調の後の長母音上にある場合も上昇調として発音される。例: lakwet〈子供〉/la̙ːk˨-we̙ːt˦/ → [la̙ːk˨-we̙ːt˩˥] 上記以外の場所、つまり短母音上やほかの高声調の後にある場合は、高平調として発音される。例: öiywet〈斧〔単数、第2形式〕〉/a̘j˦-we̘ːt˦/ → [a̘j˦-we̘ːt˦] 〔語幹に接尾辞が付加された場合や語と語の間で〕ほかの高声調や低下降調が後にくる場合、低声調化する。例: ögere〈私は彼/彼女/それ/彼らを見る〉/a̘˦-ke̘ːr˦-e̘˦/ → ögere bik〈私は人々を見る〉/a̘˦-ke̘ːr˦-e̘˨ pi̘ːk˦/ 前置詞 ab〈の〉/a̙ːp˨/ の前でも低声調化する。例: cheet〈音〉/ce̘˨-e̘ːt˦/ → cheet ab twöliöt〈鈴の音〉/ce̘˨-e̘ːt˨ a̙ːp˨ twa̘ːl˨˩-ja̘ːt˦˨/ 高下降調は、長母音上にある場合、どこであろうと高声調から低声調に落ちる形で実現される。 短母音上にある場合は高声調に聞こえることが多い。ただし高声調の2連続するパターンと高下降調の後ろに高声調が続くパターンとでは、後者の場合に高声調が上昇調として実現されるという明確な差異がある。 〔語幹に接尾辞が付加された場合や語と語の間で〕高声調や高下降調が後にくる場合、高声調化する。例: kigat〈挨拶する〉/ki̙ː˨-ka̙ːt˦˨/ : kigat bik〈人々に挨拶する〉/ki̙ː˨-ka̙ːt˦ pi̘ːk˦/ 低下降調は低いピッチからさらに低いピッチへと緩やかに下がる声調で、長母音上にも短母音上にも極めて普通に見られ、ナンディ語を関連性の深いキプシギス語(Kipsigis)と区別する大きな特徴の一つとなっている。 低声調は、高声調の後で中平調として発音される。例: öiywö〈斧〔単数、第1形式〕〉/a̘j˦-wa̘˨/ → [a̘j˦-wa̘˧] ほかの中平調化した低声調の後でも中平調として発音される。 上記以外の場所では低平調となる。 なお母音の長短の区別や前方舌根性の有無と同様、こうした声調の区別は慣習的な綴りには反映されていない。
※この「超分節音」の解説は、「ナンディ語」の解説の一部です。
「超分節音」を含む「ナンディ語」の記事については、「ナンディ語」の概要を参照ください。
- 超分節音のページへのリンク