費用のかかるシグナルとかからないシグナル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/14 15:20 UTC 版)
「シグナリングゲーム」の記事における「費用のかかるシグナルとかからないシグナル」の解説
経済学と生物学の両方において、シグナリングゲームの主要な使われかたのひとつは、どんな状況において正直なシグナリングがゲームの均衡になりうるかということを決定することであった。すなわち、どんな状況ならば、合理的な人びと、もしくは自然選択に従う動物たち、が自分のタイプに冠する情報を明かすだろうか。 (ゲームのプレーヤーの) 双方が一致した利益をもつ、言いかえるとどんな状況においても双方が同じ帰結を好む、ならば、正直が均衡になる (ただし、これらのケースの大半において、[正直均衡だけでなく] コミュニケーションの行われない均衡もあいかわらず存在する)。しかしながら、双方の利益が完全には重ならないならば、情報を与えるシグナリング体系を維持することは重要な問題を提起する。 ジョン・メイナード=スミスによって描かれた、血縁個体間の譲渡に関する状況を考えよう。シグナルの送り手は飢えて死にそうであるかあるいはただ空腹であるかとし、その事実を、食べものをもっているべつの個体に対して伝えるとする。この空腹のほうの個体は空腹の程度によらずより多くの食べものを欲しているのだが、食べものをもっているほうの個体は、本当に飢えて死にそうである場合にかぎり食べものを与えたいと思っている。両プレーヤーは、シグナルの送り手が餓死しそうな場合には利益を共有しているが、たんに空腹にすぎない場合には相反する利害をもっている。シグナルの送り手は、空腹のとき、食べものの必要性に関して嘘をつき食べものを得ようとする誘因をもっている。そしてこの送り手がいつも嘘をつく場合、受け手は送られてくるシグナルを無視して、自分が最善と考えることをなすべきであろう。 このような状況において、どのようにしてシグナリングが安定でありうるかを決定することは、経済学者と生物学者を悩ませてきた。両分野は独立に、シグナルのコストが一定の役割を果たすだろうと示唆している。あるシグナルを送ることに費用がかかるならば、そのシグナルを (あえて) 送る価値があるのは、飢えて死にそうなほうにだけであろう。正直さを裏づけるためにコストが必要になるのはどんなときなのかという分析は、これら両分野において重要な研究領域である。
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