花粉の生態
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/03 02:10 UTC 版)
堆積物中に含まれる量と花粉の生産量は比例するため、生産量に関する研究も行われている。この研究は花粉病の基礎的知見としても重視されている。一方で花粉は散布が広範囲にわたることから花粉分析の結果を考察する上で、混乱を引き起こす要素となることがある。つまり、復元しようとするのが分析地点周囲の植生であっても、その外側から飛散して堆積した遠方由来の花粉によって、ダイアグラムがゆがめられることである。この問題に対しては、花粉生産量が大きい風媒樹種で、先駆樹種でありしばしば極端な消長を示すハンノキ属などを、ダイアグラム作成の際に分母として用いる基数から除外する等の方法がとられる。また、ある地点で得られる花粉組成が、周囲のどの程度の範囲の植生を反映しているのかという基礎研究も、表層花粉や空中花粉、シミュレーションモデルを用いた解析によりおこなわれてきた。それらの研究によれば、堆積盆や堆積する場所の空間的広がりが広いほど、より広範囲の植生を反映するという結果が得られている。したがって、ごく狭い沼における分析結果は、林分レベルを反映するものでしかない可能性があるし、また遺跡の堆積物など、開けた場所における分析結果は、虫媒花粉を除いて一般に周辺の広い範囲の植生を反映したものとなる可能性が高い。また、堆積物中の花粉は種類によって様々な腐蝕作用をうけるため、砂質分の多い堆積物では結果として腐食に強い外膜の厚い花粉が残りやすくなるなど、分析結果に悪影響を与えることもある。
※この「花粉の生態」の解説は、「花粉分析」の解説の一部です。
「花粉の生態」を含む「花粉分析」の記事については、「花粉分析」の概要を参照ください。
- 花粉の生態のページへのリンク