自然でない同型
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/05/07 22:24 UTC 版)
自然変換という概念は圏論的なもので、(感覚的には)圏の全体にわたって一貫した対応を与えるような函手間の特定の写像といったものを表している。(圏全体でなく)個々の対象間の特定の射(殊に同型)が、略式的に「自然同型」と呼ばれることもある。これは暗にそれが事実上圏全体で定義され、函手間の自然変換を定めるものになっていることを意味する言い方である。こういった直観を定式化することは、圏論の勃興において動機を与える要因であった。対して、圏全体で定まる自然変換に拡張することができないような、特定の対象間の特定の写像のことは「自然でない同型」(unnatural isomorphism) と呼ぶことができる。対象 X と函手 G (簡単のため恒等函手とする)および同型射 η: X → G(X) が与えられたとき、自然でないことの証明は、自己同型射 A: X → X で同型 η と可換でない(つまり η ∘ A ≠ A ∘ η となる)ものを与えるこができれば最も容易に示せる。より強く、X と G(X) とが自然同型でないことを(特定の同型に言及することなく)示そうと考えるならば、「任意の」同型 η に対して、それと可換でない A が存在することを示す必要がある。場合によっては単一の自己同型 A が候補となる全ての同型 η に対して期待したものになっていることもあるが、そうでない場合には各同型 η ごとに異なる自己同型 Aη をどのように構成するかを示さねばならない。圏のこのような射は重要で、例えばこのような射が恒等射しかなければ、任意の劣自然変換が自然変換になる。 このことは、群論や加群の理論において「ある対象の与えられた直和分解が「自然でない」若しくは「一意でない」場合に、直和分解を保存しない自己同型が存在する」といったことがあるのと似ている(より圏論的ではあるが)。 文献によっては、"=" を(普通は写像が)本当に等しいことを表すためにとっておいて、自然同型に "≅" を、自然でない同型に "≈" を用いることがある。
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