自己又は他人の権利を防衛するため
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/10 13:17 UTC 版)
「正当防衛」の記事における「自己又は他人の権利を防衛するため」の解説
自己又は他人の権利「権利」は成法上で権利の名の付いているものに限らず、広く法律上保護されている利益(法益)をいう。 「他人」には国家正当防衛の濫用を憂慮して国家を含まないとする学説もあるが、通説は自然人の私益(個人的法益)に限らず公益(国家的法益や社会的法益)を防衛するためにも正当防衛は成立するとしている。なお、他人の法益を防衛するための正当防衛は緊急救助ともいう。 防衛の意思正当防衛について規定した刑法36条1項を見ると「自己または他人の権利を防衛するため」となっているが、正当防衛が成立するためには権利(利益)を防衛するために行為するのだという主観的な認識(防衛の意思)が必要であるとする主観説と不要とする客観説に二分されている。 客観説(防衛の意思不要説)から主観説(防衛の意思必要説)に対しては正当防衛の成立範囲が著しく狭くなり不当であるという批判があり、主観説から客観説に対しては明らかに犯罪的な意図をもって行われた行為までが正当防衛となってしまい著しく不当であるという批判がある。 通説・判例は主観的正当化要素として防衛の意思を必要としている(主観説)。当初の判例は、防衛の意思とは純粋な防衛の動機や目的に限定して考える目的説をとっていた。この見解によれば怒りや逆上といった防衛とは異なる動機があればもはや「防衛の意思」は存在せず、正当防衛も成立しないと考えた。しかし急に他者から攻撃を受けた場合に冷静さを保って防衛の目的のみから反撃することは困難であり、正当防衛が成立する場合を極端に制限してしまうという批判があった。その後、判例は防衛の意思の内容について「急迫不正の侵害を認識しつつ、これを避けようとする単純な心理状態」であるというように解釈を変更することで、憤激や逆上から反撃行為を加えても直ちに防衛の意思がないとされることはない、すなわち憤激や逆上していても正当防衛が成立しうる場合があるとしているという立場に変わっている。その一方、防衛の意思が全く無い、防衛に名を借りて積極的に加害する行為(積極的加害行為)については防衛の意思が否定されることを認めている。
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