自動散布
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 03:52 UTC 版)
植物が自身の力で種子を散布する様式は、自動散布(自力散布、自発分散、autochory; 自力射出散布、autonomous ballistic seed dispersal)とよばれる。種子を射出する力は、果皮の乾湿運動によるものや果皮や種皮の膨圧によるものがあり、その力が果皮をつなぎ止めている力や種子を保持する力を上回った瞬間に種子をはじき飛ばす。蒴果の中には、以下のように種子を自動散布するものが知られている。 スミレ属(スミレ科)の蒴果は3片に裂開するが、船状になったそれぞれの裂片に複数の種子が入った状態になる(下図5a)。その後、各裂片が乾燥することで収縮していき、種子をはじき飛ばす。マンサクやトサミズキ(マンサク科)やツゲ(ツゲ科)の蒴果も、果皮の乾燥・収縮によって種子を射出する(下図5b)。ゲンノショウコ(フウロソウ科)では、蒴果が乾燥して限界に達すると5つに分かれて巻上がり、種子をはじき飛ばす(下図5c)。コクサギ(ミカン科)では、蒴果が心皮ごとに分離し、その外果皮が開き、内果皮がはじけて種子を射出する(下図5d)。 5a. キバナノコマノツメ(スミレ科)の開いた蒴果: 各裂片が狭くなって種子をはじき飛ばす。 5b. セイヨウツゲ(ツゲ科)の蒴果 5c. フウロソウ属(フウロソウ科)の種子を射出した蒴果 5d. コクサギ(ミカン科)の果実(白いものは内果皮)と種子 5e. カタバミ(カタバミ科)の蒴果 5f. オニツリフネソウ(ツリフネソウ科)の裂開前の蒴果 5g. 裂開後の蒴果 上記の例は乾燥による収縮が主な力となっているが、蒴果を構成する生きた細胞の膨圧上昇によって果実がはじけて種子を射出する例もある。このような例は、ムラサキケマン、シロボウエンゴサク(ケシ科)、コミカンソウ(コミカンソウ科)、ツリフネソウ、ホウセンカ(ツリフネソウ科; 右図5f, g)に見られる。 カタバミ属(カタバミ科; 上図5e)では、種子を包む皮の膨圧が高くなり、刺激が加わることでこの皮が反転して蒴果が裂開し、種子をはじき飛ばす。
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