腸管上皮細胞の移動因子
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/04 17:53 UTC 版)
エフリンファミリーとEphBファミリーの細胞表面受容体との相互作用は、腸管上皮細胞(英語版)が陰窩から絨毛へ安定して規則正しく特異的に移動することを可能にしている。腸陰窩の深部ではWntタンパク質がEphB受容体の発現の引き金を引き、前駆細胞がより表面へ移動するほどEphの発現は低下し、エフリンリガンドの発現は上昇する。移動は双方向性シグナル伝達機構によって引き起こされ、エフリンリガンドとEphB受容体との結合がアクチン細胞骨格のダイナミクスを調節して反発を引き起こす。相互作用が止まると、細胞はその場にとどまる。粘液を分泌する杯細胞と吸収上皮細胞は内腔へ向かって移動するが、成熟したパネート細胞は反対方向、腸陰窩の底部へ移動し、そこにとどまる。 Eph受容体のノックアウトマウスを用いて行われた実験では、さまざまな細胞種の分布の異常がみられており、受容体が発現していない場合、エフリンリガンドは正確な細胞の配置を行うには不十分であることが示されている。ノックアウトマウスを用いた近年の研究では、エフリン-Eph間の相互作用が大腸がんの抑制に間接的な役割を果たしているという証拠が得られている。大腸の腺腫性ポリープは、エフリン-Eph間相互作用によって制御されている上皮細胞が無制御に増殖することによって形成される。APC(英語版)に変異を有するマウスでは、エフリンBタンパク質が存在しなければEphB陽性腫瘍細胞の拡大を防ぐ手段が存在しないこととなる。
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