胴部付属肢の対応関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/29 19:05 UTC 版)
「エーギロカシス」の記事における「胴部付属肢の対応関係」の解説
原記載の Van Roy et al. 2015 では、本属の鰭の特徴が特に注目された。これは当時までラディオドンタ類は、胴節ごとに腹側1対の鰭のみしか発見できず、「脚のあるラディオドンタ類」として一般に知られたパラペイトイアも、後に別系統の見間違いだと判明したからである。しかしこのエーギロカシスは、この体制と異なり胴節ごとに2対の鰭をもっていた。 ラディオドンタ類に類縁の古生物のうち、パンブデルリオンとケリグマケラ、いわゆる「gilled lobopodians」は鰭の下に葉足動物に似たの脚(葉足)をもち、オパビニア類のオパビニアもおそらく似たような脚をもつと考えられる。そのため、従来の知見では、ラディオドンタ類の鰭は gilled lobopodians とオパビニア類の鰭に相同で、その脚はラディオドンタ類で退化消失し(もしくは単に化石に保存されず)、胴節ごとに1対の鰭しか残らなかったと考えられた。しかしエーギロカシスの発見は、この仮説を覆し、少なくともラディオドンタ類の共通祖先は胴節ごとに2対の鰭をもち、そのうち付け根が setal blades に連結した背側の退化的な鰭は gilled lobopodians とオパビニア類 の setal blades に覆われた鰭に相同で、腹側の鰭は gilled lobopodians の鰭ではなく、むしろ葉足に相同だと示唆される。 この腹側の鰭と葉足の相同性は、構造上の類似性が低いという疑問点が存在するが、背腹位置は対応しており、ラディオドンタ類の腹側の鰭と Gilled lobopodians の鰭の非相同性(および背側の鰭の相同性)も、逆の畳み方と setal blades の有無などの相違点に支持される。また、ラディオドンタ類の腹側の鰭は往々にして発達した筋組織をもつため、パンブデルリオンが葉足のみに発達した筋肉をもつ(鰭は筋肉をもたない)ことも、この対応関係を支持する証拠とされる。 エーギロカシスの発見も、節足動物の二叉型付属肢は、背側と腹側の付属肢構造の融合を通じて由来する説を支持する証拠の1つとなる。真節足動物(ラディオドンタ類より派生的な節足動物)の二叉型付属肢のうち、外葉と内肢はそれぞれラディオドンタ類の背側の setal blades と腹側の鰭(および Gilled lobopodians の setal blades と葉足)に相同だと考えられる。これを踏まえて、背腹の付属肢構造(setal blades を有する背側の鰭とそれを欠く腹側の鰭)が二叉型に融合しない形質も、ライララパクスから得られる神経解剖学的証拠に併せて、ラディオドンタ類は真節足動物に含まれるものや汎節足動物以外の脱皮動物(環神経動物)に類縁するものではなく、基盤的な節足動物(ステムグループ節足動物)である説を支持する証拠とされる(ラディオドンタ類#分類も参照)。 分類群背側の付属肢要素腹側の付属肢要素葉足動物- 葉足 Gilled lobopodians、オパビニア類Setal blades鰭 葉足 (従来の知見)ラディオドンタ類Setal blades鰭 (退化) (本文の知見)ラディオドンタ類:エーギロカシスなど(フルディア科)Setal blades背側の鰭 腹側の鰭 (本文の知見)ラディオドンタ類:アノマロカリス科、アンプレクトベルア科Setal blades 鰭 真節足動物外葉 内肢
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