胞子と前葉体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2013/03/10 22:22 UTC 版)
イワヒバ科の胞子は茎の先端部に多数の胞子葉が集まってできた胞子葉穂の部分にできる。胞子嚢は胞子葉に包まれるようにして1つずつ生じるが、これには大胞子嚢と小胞子嚢の区別がある。両者は外見上の差はほとんどないが、大胞子嚢ではその中に4個の大胞子が、小胞子嚢には多数の小胞子が作られる。大胞子からは雌性の、小胞子からは雄性の前葉体が生じる。このような性質は、現生のシダ植物では、イワヒバ科以外ではミズニラ科とサンショウモやデンジソウなど水生シダ類だけに見られるものである。 この胞子が発芽すると前葉体になるが、イワヒバ科の前葉体は特殊で、胞子の壁を破って外へ伸び出す事なく、胞子の壁の中で成熟する。このような前葉体を、特に内生型という。雄性の前葉体では、胞子の内部に造精器が形成されるような格好になり、破れて精子を放出する。精子は先端に2本の鞭毛を持つ。雌性の前葉体の場合、胞子内部は細胞分裂し、胞子の壁の一部が破れて前葉体の一部がそこから顔を出し、そこに若干の根と造卵器が形成される。 このような前葉体を形成するのは、現生のシダ植物ではイワヒバ科だけであるが、外で大きく発芽せずに発達する配偶体は種子植物と共通する特徴である。イワヒバ科の前葉体の内部で受精が起こり、胚が発達する形は種子植物の胚嚢において卵細胞が受精して胚が発達するのと同じ形である。イワヒバ科において大胞子が胞子嚢内で発芽し、小胞子がそばに飛んできて発芽することで受精が起これば、これは種子植物の受粉とほぼ同じ現象に当たる。実際にそんなふうにして発芽するものもあるようである。 さらに、大胞子嚢の中の胞子が1個だけになり、胞子嚢を包む殻が胞子葉から生じて、胞子が外に出ずに発芽すれば、これを種子と呼ぶことができる。現在の種子植物はすべて大葉類に由来するものとされているが、かつては小葉類にも種子を持つものがあったとも言われている。
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