絵コンテの特徴と評価
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/11 21:29 UTC 版)
出﨑の絵コンテでは、カット割りにおいては必ずしも動きの繋がりは重視されない。また、視覚的効果を上げるだけでなく、ときにキャラクターの心理までも表現する大胆な画面レイアウトも大きな特徴。多くの場合、筆致が非常にラフなため絵・文字とも判読が困難で、「読むのだけでギャラが欲しい」と言った演出家もいるとのこと。 しかし小林七郎は出﨑の絵コンテについて、慣れると他の監督の絵コンテに比べて一番演出意図がわかりやすいと絶賛した。また、出﨑の絵コンテは単なる指示用の書類ではなく「たたき台」であるとし、そこに描かれている内容をさまざまなスタッフとともに議論、検討して、表現を引き出そうとしたとも語っている。実際に『エースをねらえ!』(劇場版)では、絵コンテのイメージを徹底するため、レイアウト原図を元に全てのカットごとに作画・美術・撮影の主要スタッフを集めて打ち合わせるという、前代未聞の作業を敢行している。出﨑とともにマッドハウスを設立した丸山正雄は、同社の若いスタッフが出﨑をまねた粗い筆致の絵コンテを描くことがあるが、出﨑の場合は絵が巧いので粗いタッチでも絵コンテが成立するのだと述べた。 初期監督作品では他者が絵コンテを担当した割合が比較的多いが、それらの大部分は出﨑自身が徹底的な手直しを行った。対して、出﨑が絵コンテマンとして制作した絵コンテが他者に改変された事例もいくつか存在する。『ルパン三世』(テレビ第1作)第13話「タイムマシンに気をつけろ!」と17話「罠にかかったルパン」では、当時Aプロダクションに所属していた宮崎駿と高畑勲による改変を受けた。もっとも同作の作画監督を務めた大塚康生によると、宮崎と高畑は基本的に「出﨑の絵コンテのままで面白いので、手をつけずにおこう」とのスタンスだったらしく、絵コンテ自体はあまり変えずに作画段階でニュアンスを変更した部分が大きかったとのことである。
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