第1年:スイス
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《第1年:スイス》(Première année: Suisse, S.160)は、1835年から36年にかけてリストがマリー・ダグー伯爵夫人と共に訪れたスイスの印象を音楽で表現したものである。これらの曲はまずは3部19曲からなる《旅人のアルバム》としてまとめられ、1842年に出版されたが、このうち第1部の5曲と第2部の2曲を改訂し、更に2曲を追加して1855年に出版されたのが《巡礼の年 第1年スイス》である。第2,5,7,9曲の標題はバイロンの詩集『チャイルド・ハロルドの巡礼』から、第6,8曲はセナンクールの小説『オーベルマン』から、第4曲はシラーの詩『追放者』からとられている。《旅人のアルバム》に存在しない追加曲は第5,7曲である。 泉のほとりで (Au bord d'une source) 演奏: ランドルフ・ホカンソン(英語版) オーベルマンの谷 (Vallée d'Obermann) これらの音声や映像がうまく視聴できない場合は、Help:音声・動画の再生をご覧ください。 ウィリアム・テルの聖堂 Chapelle de Guillaume Tellスイス独立の英雄ウィリアム・テルゆかりの聖堂の荘厳さを音楽化している。 ヴァレンシュタットの湖で Au lac de Wallenstadtバイロンの『チャイルド・ハロルドの巡礼』からの一節が引用されている。 パストラール Pastoraleスイス山岳地帯の牛飼いの歌に基づく。 泉のほとりで Au bord d'une source《第1年》の中で最も有名な曲で、水のきらめきがあざやかに表現され、華麗な技巧と詩的な楽想が両立している。シラーの詩の一節「囁くような冷たさの中で、若々しい自然の戯れが始まる」が記されている。 嵐 Orage曲集の中でもとりわけ技巧を要する曲。『チャイルド・ハロルドの巡礼』からの一節が引用されている。 オーベルマンの谷 Vallée d'Obermann演奏時間が約15分にわたる大曲で、〈泉のほとりで〉に並ぶ傑作とされる。19世紀前半にヨーロッパに自殺熱をもたらしたセナンクールの小説『オーベルマン』に着想を得て、主人公の苦悩や感情の移ろいを描いている。 牧歌 Eglogueスイスの羊飼いの歌。『チャイルド・ハロルドの巡礼』の一節が引用されている。《旅人のアルバム》に含まれていないが、1836年には作曲されていたと思われる。 郷愁 Le mal du pays『オーベルマン』からの長大な引用が序文として掲げられている。「自分の唯一の死に場所こそアルプスである」とパリから友人に書き綴ったオーベルマンが抱いた望郷の念を音楽で表現している。 ジュネーヴの鐘 Les cloches de Genève初稿はジュネーヴでマリーとの間に生まれた長女ブランディーヌに捧げられた。娘の無事を祈る安らぎに満ちた音楽。
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