磁気生理学とは? わかりやすく解説

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磁気生理学

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/08 04:08 UTC 版)

磁気生理学(じきせいりがく)とは、神経筋肉心臓やその他の組織または細胞磁気的性質と生理機能との関係を解明する生理学の一部門、またはそれに用いられる実験技術である。

概要

生体電位とは異なり、磁場は影響を受けにくいので体内の深部の信号を明確に捕捉することができる。生体電位は比較的簡易な装置で計測できる反面、生体磁場の検出には超伝導量子干渉素子 (SQUID) や光ポンピング磁力計のような高感度の磁力計を必要とする。

歴史

電気生理学が既に19世紀から研究が進められていたのとは対照的に磁気生理学の分野が確立したのは1960年代に入ってからの事だった。アンペールの法則により、生体内で磁場が生じる事は早くから予想されていたものの、微弱な生体磁場を検出可能な十分な感度の磁力計が登場するまで待たなければならなかった。マサチューセッツ工科大学ディビッド・コーエン (David Cohen) が1968年に100万回巻のコイルを用いて、同時に測定された脳波に同期させて加算平均により、α波に対応する脳磁図の計測に成功した[1][2]1972年には同じくコーエンによって高感度の超伝導量子干渉素子 (SQUID) を用いて生体磁気が計測された[3][4]。1970年代以降、SQUIDを用いる手法が普及したことによって発展した[5][6]

コーエン達による研究で、心臓の周囲には拍動に伴って10−7〜10−8ガウス(1ガウスは約10−4テスラ)の交番磁場が発生していて、頭部にも10−9ガウスの磁場が左半分から右半分に向かって発生していることが判明した[2]

実験法

実験法としては、外部からの磁気雑音を除くためにシールドルーム内で高感度磁気センサを体の表面などに固定して磁気の計測を行う。磁気センサとしては超伝導量子干渉素子 (SQUID) や光ポンピング磁力計が使用される。また、近年では極低温への冷却が不要でSQUIDよりもダイナミックレンジの大きいトンネル磁気抵抗効果素子の高感度化が進む事により、シールドルームの不要な測定法も開発されつつある[7][8][9]

参考図書

関連項目

脚注

  1. ^ Cohen, David. "Magnetoencephalography: evidence of magnetic fields produced by alpha-rhythm currents." Science 161.3843 (1968): 784-786.
  2. ^ a b 人体のヒエログリフ、生体磁気を解読する, TDK, http://www.tdk.co.jp/techmag/magnetism/zzz21001.htm 2017年6月5日閲覧。 
  3. ^ Cohen, David. "Magnetoencephalography: detection of the brain’s electrical activity with a superconducting magnetometer." Science 175.4022 (1972): 664-666.
  4. ^ 「生体情報の可視化技術」、コロナ社、1997年6月、ISBN 9784339070699 
  5. ^ 大道久, 井深丹、「超伝導量子干渉計の医学への応用」 『応用物理』 1979年 48巻 4号 p.361-365, doi:10.11470/oubutsu1932.48.361, 応用物理学会
  6. ^ 伊良皆啓治, N. Chaiyapoj, 中西徳昌 ほか、「高分解能 SQUID 磁束計による生体磁気計測」 『日本応用磁気学会誌』 1997年 21巻 4_2号 p.805-808, doi:10.3379/jmsjmag.21.805, 日本応用磁気学会
  7. ^ 液体ヘリウム不要、室温動作で心臓電流の磁場を拾うトンネル磁気抵抗素子, ASCII.jp, http://ascii.jp/elem/000/001/031/1031328/ 2017年6月5日閲覧。 
  8. ^ 加藤大樹, 大兼幹彦, 藤原耕輔 ほか、「生体磁場センサ応用に向けた強磁性トンネル接合の作製と評価」 『生体医工学』 2015年 53巻 Supplement号 p.S187_02, doi:10.11239/jsmbe.53.S187_02, 日本生体医工学会
  9. ^ 小野敦央, 大兼幹彦, 永沼博 ほか、「生体磁場センサ応用に向けたホイスラー合金電極 強磁性トンネル接合の作製」 『生体医工学』 2015年 53巻 Supplement号 p.S187_01, doi:10.11239/jsmbe.53.S187_01, 日本生体医工学会

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