磁気流体力学の仮定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/27 15:11 UTC 版)
磁気流体力学では、使用の実態に即して、近似として通常 次の仮定がなされる。 まず、ここで扱うのは電気伝導度の相当よい流体であるから、導体の電気力学に倣って変位電流を無視し、磁場 B と電流 j とはアンペールの法則で結び付けられているとする。 すなわち rot B = μ j {\displaystyle {\mbox{rot}}{\boldsymbol {B}}=\mu {\boldsymbol {j}}} :(1) ここで μ {\displaystyle \mu } は流体の透磁率で、定数と仮定されている。 ついで流体はほぼ中性とし、電荷を流体が運ぶことで生ずる対流電流は伝導電流と比較して小さいとして無視し、電流は伝導電流のみであるとする。そしてそれはオームの法則により定まるとする。すなわち j = σ ( E + v × B ) {\displaystyle {\boldsymbol {j}}=\sigma \left({\boldsymbol {E}}+{\boldsymbol {v}}\times {\boldsymbol {B}}\right)} :(2) ここで σ {\displaystyle \sigma } は流体の電気伝導度である。ただし、この仮定は電荷密度 ρ e {\displaystyle \rho _{e}} を 0 とすることではない。実際、上記2つの式からE を求めてガウスの式 ρ e = div ( ϵ E ) {\displaystyle \rho _{e}={\mbox{div}}(\epsilon {\boldsymbol {E}})} に代入すれば 0 でない ρ e {\displaystyle \rho _{e}} が求まる。ここで ϵ {\displaystyle \epsilon } は流体の誘電率である。 また、これら2つの式を用いて、電磁誘導に関するマクスウェルの式 rot E + ∂ B / ∂ t = 0 {\displaystyle {\mbox{rot}}{\mathit {E}}+\partial {\boldsymbol {B}}/\partial t=0} から電場 E を消去すると、次の誘導方程式が得られる。 ∂ B ∂ t = rot ( v × B ) + 1 σ μ Δ B {\displaystyle {\frac {\partial {\boldsymbol {B}}}{\partial t}}={\mbox{rot}}({\boldsymbol {v}}\times {\boldsymbol {B}})+{\frac {1}{\sigma \mu }}\Delta {\boldsymbol {B}}} :(3) ここで rot rot B = grad div B − Δ B = − Δ B {\displaystyle {\mbox{rot}}\ {\mbox{rot}}{\boldsymbol {B}}={\mbox{grad}}\ {\mbox{div}}{\boldsymbol {B}}-\Delta {\boldsymbol {B}}=-\Delta {\boldsymbol {B}}} を用いた。また σ {\displaystyle \sigma } は定数と仮定した。 なおまた、運動方程式においても電荷密度が小さいので、電場による力は省略して、流体に及ぼす力は磁場による力 j × B {\displaystyle {\boldsymbol {j}}\times {\boldsymbol {B}}} のみであるとする。 こうして、運動方程式と方程式(1)および(3)により方程式系は変数 v {\displaystyle {\boldsymbol {v}}} と B {\displaystyle {\boldsymbol {B}}} とで閉じて、見かけ上、電場 E {\displaystyle {\boldsymbol {E}}} は完全に消去される。これが磁気流体力学の名の起こりである。しかし、電流を規定するという意味で電場の役割は本質的で、具体的問題では電場を考慮せずには解くことができないこともある。
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