特異モジュライ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/20 03:28 UTC 版)
虚数乗法を持つ楕円曲線の周期比率となる上半平面の点 τ はかならず虚二次数である。これらの点におけるモジュラ不変量 j(τ) は特異モジュライとよばれる。ここでは特異というのは特異点をもつという意味ではなく、非自明な自己準同型をもつという意味で特異と古くは呼ばれた事による。 モジュラ函数 j(τ) は、虚二次数 τ に対しては代数的数となる。逆に j が代数的であるような上半平面の値 τ はこの場合に限ることも知られている。。 Λ が周期比率 τ をもつ格子のとき、j(τ) を j(Λ) と書く。さらに Λ が虚二次体 K の整数環 OK のイデアル a であれば、対応する特異モジュライを j(a) と書く。すると、値 j(a) は実数である代数的数であり、K のヒルベルト類体(Hilbert class field) H を生成する。体の拡大の次数 [H:K] = h は K の類数であり、H/K は K のイデアル類群に同型なガロア群を持つガロア拡大である。このガロア群とイデアル類群の同型はイデアル類の作用が次のように記述できることによるもの、すなわち [b] : j(a) → j(ab) によって値 j(a) の上に作用する。 特に、K が類数 1 であれば、j(a) = j(O) は有理整数である。例えば、j(Z[i]) = j(i) = 1728 である。
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