特異値、特異ベクトルと特異値分解との関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/30 17:38 UTC 版)
「特異値分解」の記事における「特異値、特異ベクトルと特異値分解との関係」の解説
M を Km×n 上の行列とする。ある非負の実数 σ に対し、 M v = σ u M ∗ u = σ v {\displaystyle {\begin{aligned}Mv&=\sigma u\\M^{*}u&=\sigma v\end{aligned}}} という条件を満たす Km 上の単位ベクトル u と Kn 上の単位ベクトル v の組が存在するとき、実数 σ を(ベクトル u, v に対応する)行列 M の特異値 (singular value) と呼ぶ。またベクトル u, v を、それぞれ σ の左特異ベクトル (left-singular vector) と右特異ベクトル (right-singular vector) と呼ぶ。 任意の特異値分解 M = U Σ V ∗ {\displaystyle M=U\Sigma V^{*}} において、Σ の対角成分は M の特異値に等しく、ユニタリ行列 U, V の列ベクトルは、それぞれ左特異ベクトル、右特異ベクトルを並べたものである。すなわち、 m × n 行列 M は、少なくともひとつ、多くとも q = min(m, n) 個の異なる特異値を持つ。 常に Km 上のユニタリ基底が存在して、それは M の左特異ベクトルから成る。 常に Kn 上のユニタリ基底が存在して、それは M の右特異ベクトルから成る。 1つの特異値に対し、2つ以上の線形独立な右(あるいは左)特異ベクトルが存在する場合、その特異値は縮退 (degenerate) しているという。縮退のない特異値に対しては常に、左右の特異ベクトルがそれぞれ(位相 eiθ の違いを除いて)唯一つ存在する。結果として、もし行列 M のすべての特異値が正であり縮退のない場合、特異値分解は(ユニタリ行列 U, V の各列にかかる位相 eiθk の違いを除いて)唯一つに定まる。 縮退のある特異値 σdeg に対して、左特異ベクトル u1, u2 の正規化された線型結合 uc = αu1 + βu2 を考えると、左特異ベクトルの線型結合 uc もまた特異値 σdeg の左特異ベクトルとなっている。同様のことが右特異ベクトルについても成り立つ。特異値分解のユニタリ行列 V, U の特異値 σdeg に対応する列ベクトルは、特異ベクトルの線型結合の中から自由に選ぶことができるため、結果として行列 M の分解は一意ではなくなる。 固有値分解が正方行列に対してのみ適用できるのに対し、特異値分解は任意の矩形行列に対して適用が可能である。また、行列 M が正定値のエルミート行列(したがって正方行列)である場合、M の固有値は実数かつ非負であり、このとき M の特異値と特異ベクトルはそれぞれ M の固有値と固有ベクトルに一致する。
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