燃料節約説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/02 06:22 UTC 版)
「機長が燃料節約のために意図的に航路を北にずらし、スクランブルを受ける危険を承知でソ連領空を侵犯した」とする説である。この説の根拠は、当時の大韓航空機は航空運賃が他社に比べて安く(現在においても同様である)、「燃料を節約することは機長の使命であった」という報道もあった(少なくとも「燃料節約に気を使うこと」は現在の他社においても同様である)。しかし、この説の欠点として、以下が指摘されている。 大韓航空は5年前の1978年にもソ連領空を侵犯し迎撃を受け、死傷者を出した上に乗員乗客が拘束を受ける事件を起こしており(大韓航空機銃撃事件)、その後深刻な旅客離れを招き経営が傾くという経験をしている。当時の状況においてソ連領空へ故意に領空侵犯を行った場合、良くても不時着や強制着陸、最悪の場合は攻撃を受けて撃墜される可能性があることを大韓航空も機長も理解していたはずで、その結果、5年前同様に同社が被る損害は計り知れないものだということも分っていたはずであり、そこまでの危険を冒してまで、日本円で数万円から数十万円程度と思われる燃料を節約する必要があったのかという、根本的な疑問点がある。 大韓航空が同社の機長に対して、領空侵犯の上に無警告で撃墜された過去のある仮想敵国領空を侵犯してまで燃料節約を行うように指示したという実例、証拠はない。また、他の大韓航空をはじめとするソ連と敵対していた西側諸国の旅客便が、同様に仮想敵国領空を侵犯してまで燃料節約を行っていたという実例、証拠もない。 さらに、燃料の節約には、ルートのみならず高度や風向きも影響するが、もし燃料節約のために機長がソ連領空を侵するルートを取ったとしても、『この日に飛行したルート、高度、風向きが燃料の節約に最適か』という分析は、この説を唱える者は誰1人として行っていない。
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