無限作業の完了
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/20 05:28 UTC 版)
ラッセルの処方箋とは、彼が論理的には可能だと言ったことに由来し、無限回の作業は次のようにすれば、有限時間内に収まる、というもの。ゼノンのパラドックスの二分法における前進型解釈で目的点に到着するケースにあたる。次の時系列に則った作業が、なされるとしよう。 1,1/2,1/4,1/8,1/16,... この時系列で順に作業がなされるとするなら、その経過時間の総和 S=1+1/2+1/4+1/8+1/16+... Sは2に収束する。すなわち、2分後には無限回の作業がなされたことになる。ランプで言えば、 初回にスイッチを押し点灯させ、1分後二回目を押し消灯する。1/2分後三回目を押し点灯、1/4分後、...、以下同様に半分の時間ごとにスイッチを押す。そのようにして、無限回スイッチを押したとしよう。 時刻:0 1 3/2 7/4...2 状態:○○○○○○○○●●●●○○● .... ? このランプ、2分後には点灯しているのか消灯しているのか。 この質問に答えることはできない。点灯していることはできない、なぜなら、直ちに消灯することなく点灯したことはなかったのだから。消灯していることもできない、なぜなら、はじめに点灯した後は、直ちに点灯することなく消灯したことはなかったのだから。しかし、ランプは消灯しているか、点灯しているかどちらかでなければならない。これは矛盾である。 このランプは、次の級数を求めることに等しい。 1+(-1)+1+(-1)+.... この級数が値を持たないと同じく、このランプは、無限回の作業が完了したときに、なにが行われるかを決める確立した方法がないことを示している。 この主張「スーパータスクは自己矛盾」に対して、時系列は半開区間[0,2)にあり、2分後という時刻は、この時系列に含まれていない、とする批判がある。含まれていないので、自己矛盾ではない、と。しかし、ここで消灯・点灯のどちらであるのかと尋ねているのは、「最後の作業ではなく、無限の作業の最終的すなわち全体の結果を尋ねているのだから、妥当な質問である。」この件は、ゼノンのパラドックスを級数の収束を以て数学的解決とする人々の持つ誤解を示しては居る、とトムソンは言う。
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