無裁定価格理論の経済学的基礎付け
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/05 15:08 UTC 版)
「無裁定価格理論」の記事における「無裁定価格理論の経済学的基礎付け」の解説
標準的な経済学のモデルにおける一般均衡下では裁定取引は存在しないことが言える。無裁定価格理論はそのような意味で経済学的バックグラウンドを持つ。 金融市場における少なくとも一つの経済主体がより多く消費できることを望むような選好を持つとしよう。この時、裁定取引が存在すると仮定する。すると、裁定取引を用いることで無費用で、将来の全ての状態での富を減少させることなく、ある状態での富を際限なく増加させることができる。よって富を際限なく増加させられる状態において、この経済主体は経済に存在する資源量以上の消費を求めることから均衡が存在しなくなってしまう。したがって標準的な仮定の下での一般均衡では裁定取引は存在し得ない。 より多く消費することを望むという経済主体の選好は一般的で、かつ無裁定価格理論はそれ以上の選好の詳細な特定化を必要としない。このことから無裁定価格理論は選好に依存しない (英: preference-free)と言われる。しかし、無裁定価格理論は上述の通り複製ポートフォリオに組み入れられた資産の現在価格は既知である必要がある。これらの資産の現在価格は無裁定価格理論からは導くことができないため、理論上は一般均衡理論に基づいた、つまり選好に依存した価格付けがなされている、ということには注意したい。無裁定価格理論が選好に依存しないというように言及されるのは、複製ポートフォリオに組み入れられた資産の現在価格に対する相対的な価格付けが選好に依存しないという意味であるにすぎない。
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