無衝突系と衝突系
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/07 07:11 UTC 版)
「N体シミュレーション」の記事における「無衝突系と衝突系」の解説
球状星団は典型的な重力多体系(衝突系)であり、その力学的進化の理論的研究において N {\displaystyle N} 体シミュレーションが重要な役割を果たした。 N {\displaystyle N} 体シミュレーションはその対象によって大きく無衝突系 (collisionless system) と衝突系 (collisional system) に分類される。これは二体緩和の効果が重要かどうかを意味し、それによってシミュレーションの性質が大きく変化する。 二体緩和とは、重力多体系において二体間の近接散乱による系の熱的な進化のことを言う。二体緩和による系の進化に要する時間スケール t r e l a x {\displaystyle t_{\mathrm {relax} }} は、粒子数 N {\displaystyle N} と crossing-time t c r o s s {\displaystyle t_{\mathrm {cross} }} を用いて t r e l a x = N ln N t c r o s s {\displaystyle t_{\mathrm {relax} }={\frac {N}{\ln N}}t_{\mathrm {cross} }} と書ける。それ故に、極めて粒子数の大きなスケールでは二体緩和が効く時間は宇宙年齢よりも長くなり、その効果を無視することができる。例えば銀河は N ∼ 10 10 {\displaystyle N\sim 10^{10}} 個の恒星からなる系であり、その力学的な進化には二体緩和の効果は重要ではないと考えられている。一方、球状星団では N ∼ 10 4 − 6 {\displaystyle N\sim 10^{4-6}} であり、二体緩和が重要である。 二体緩和が効かない無衝突系では粒子数無限大の極限に相当する。このとき重力場はある種の平均場として扱うことが可能であり、個々の粒子に起因する特異性を考慮する必要はない。そのため、シミュレーションに際してツリー法などのより効率的なスキームを使用することができる。また、シミュレーションで扱われる粒子は真の粒子ではなく、位相空間のある領域を代表する点であると解釈される。
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