無名または変名の著作物
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 02:16 UTC 版)
「著作権の保護期間」の記事における「無名または変名の著作物」の解説
無名または変名の著作物の著作権は、その著作物の公表後70年を経過するまでの間、存続する(52条1項本文)。より正確には、公表してから70年を経過した年の12月31日まで存続する(著作権法第57条第1項。著作権の保護期間#保護期間の計算方法(暦年主義))。無名または変名の著作物では著作者の死亡時点を客観的に把握することが困難であるから、ベルヌ条約7条(4)が容認する公表時起算を適用した。 ただし、公表後70年までの間に、著作者が死亡してから70年が経過していると認められる著作物は、著作者の死後70年が経過していると認められる時点において著作権は消滅したものとされる(52条1項但書)。また、以下の場合には著作者の死亡時点を把握することができるから、原則どおり死亡時起算主義が適用され、著作権は著作者の死後70年を経過するまでの間存続する(52条2項)。 変名の著作物において、著作者の変名が、著作者のものであるとして周知である場合(同条2項1号) 著作物の公表後70年が経過するまでの間に、実名による著作者名の登録(75条1項)があったとき(同項2号) 著作者が、著作物の公表後70年が経過するまでの間に、その実名または周知の変名を著作者名として表示して著作物を公表したとき(同項3号) ここで、「無名の著作物」とは、著作者名が表示されていない著作物をいう。「変名」とは「雅号、筆名、略称その他実名に代えて用いられるもの」(14条)であり、「その他実名に代えて用いられるもの」の例としては俳号、芸名、四股名、ニックネーム、ハンドルネームなどが挙げられる。 また、「周知の変名」とは、その変名が著作者本人の呼称であることが一般人に明らかであって、その実在人が社会的に認識可能な程度に知られている状態をいうものと解する。たとえば、漫画家「手塚治虫」の名は「手塚治」のペンネーム(筆名)であるが、周知の変名でもある。手塚治が「手塚治虫」の名のもとで公表した作品の著作物の著作権は、手塚治(1989年2月9日没)の死後70年の経過をもって消滅する(法52条2項1号)。したがって、手塚治虫作品の著作権は2059年12月31日まで存続する(2018年改正法)。
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