瀕死のクレオパトラとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > 瀕死のクレオパトラの意味・解説 

瀕死のクレオパトラ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/27 15:14 UTC 版)

『瀕死のクレオパトラ』
イタリア語: Cleopatra morente
英語: The Dying Cleopatra
作者グエルチーノ
製作年1648年ごろ
種類キャンバス上に油彩
寸法173 cm × 237 cm (68 in × 93 in)
所蔵パラッツォ・ロッソジェノヴァ

瀕死のクレオパトラ』(ひんしのクレオパトラ、: Cleopatra morente: The Dying Cleopatra)、または『クレオパトラの死』(クレオパトラのし、: Morte di Cleopatra: The Death of Cleopatra)は、イタリアバロック期の巨匠グエルチーノキャンバス上に油彩で描いた絵画である。画家グイド・レーニの1642年の死去後、ボローニャに移り、ボローニャ派の長の役割を担ったグエルチーノが晩年の1648年ごろに制作した[1]。現在、ジェノヴァストラーダ・ヌォーヴァ美術館群英語版に属すパラッツォ・ロッソに所蔵されている[1][2]

作品

本作に描かれているのは、エジプトの女王クレオパトラが死を迎える場面である。彼女の愛人で、後に夫となるマルクス・アントニウス率いる古代ローマ軍とエジプト軍は、オクタウィアヌス率いる古代ローマ軍の軍勢に対し相次ぐ敗北を喫した。アントニウスが命を落とすと、すべてを失ったことを悟ったクレオパトラは自害した[3]。古代ローマの著述家プルタルコスの『対比列伝(英雄伝)』によれば[4]、彼女は最小限の苦痛で命を絶つために、有名なエジプトのコブラに自身の身体を噛ませた[3]

ボローニャに移ったグエルチーノはボローニャ派の影響を受け、古典主義的様式に向かった。すなわち、人物像の理想化を目指し、徐々に色彩を制限し、しばしばパステル調の色彩を用いるようになった[1]。本作はそのよい例で、わずか2つの色調で表されている。シーツとクレオパトラの肌の白色と、クッション、「壁」のように設えられた、演劇に見られるようなカーテンの赤紫色である。加えて、今や瀕死の状態でベッドの上でだらりと横になっているクレオパトラの胸から滴り落ちるルビー色の血が見える[1]

歴史

グエルチーノは、本作と同定できる作品に対して1648年3月24日にジェノヴァ修道院長カルロ・エマヌエーレ・ドゥラッツォ (Carlo Emanuele Durazzo) から125ドゥカトーニ (156スクーディに相当) を受領したことが記録されている[1][2]。当初、修道院長の2人の甥に所有されたが、約1世紀後にブリニョーレ (Brignole) 家に所蔵され、1756-1766年の間、同家の宮殿に記録されている。1889年まで同家の所有であったが、家族の最後の人物であったマリーア・ブリニョーレ・サーレ・デ・フェラーリによりジェノヴァ市に寄贈された。最初はパラッツォ・ビアンコ英語版に展示され、後に現在の所蔵地であるパラッツォ・ロッソに移された[2][5]。なお、グエルチーノは、本作より質的に劣る同主題の別ヴァージョンを1650年ごろに制作した。同年3月8日に、そのヴァージョンの支払いとしてローマに居住していたジェノヴァの依頼者から110ドゥカトーニ (132スクーディ相当) を受け取っている[2]

脚注

  1. ^ a b c d e Cleopatra morente”. ストラーダ・ヌオーヴァ美術館群公式サイト (英語). 2025年4月7日閲覧。
  2. ^ a b c d (イタリア語) P. Bagni, D. De Grazia, D. Mahon, F. Gozzi and A. Emiliani, Giovanni Francesco Barbieri Il Guercino 1591-1666, a cura di Denis Mahon, Bologna, Nuova Alfa Editoriale, 1991, ISBN 9788877792846, p. 310.
  3. ^ a b 西洋絵画の500年 2021, p. 86
  4. ^ The Death of Cleopatra”. メトロポリタン美術館公式サイト (英語). 2024年12月3日閲覧。
  5. ^ (イタリア語) P. Boccardo, La Galleria di Palazzo Rosso Genova, Milano, Federico Garolla Editore, 1992, pp. 49-51.

参考文献

  • 国立新美術館、日本経済新聞社文化事業局 編『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』日本経済新聞社、2021年。ISBN 978-4-907243-20-3 

外部リンク




英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  
  •  瀕死のクレオパトラのページへのリンク

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「瀕死のクレオパトラ」の関連用語

瀕死のクレオパトラのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



瀕死のクレオパトラのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの瀕死のクレオパトラ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS