ヴィーナスとキューピッド、マルス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/29 21:32 UTC 版)
イタリア語: Venere, Cupido e Marte 英語: Venus, Cupid and Mars |
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作者 | グエルチーノ |
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製作年 | 1633年 |
種類 | キャンバス上に油彩 |
寸法 | 139 cm × 161 cm (55 in × 63 in) |
所蔵 | エステンセ美術館、モデナ |
『ヴィーナスとキューピッド、マルス』(伊: Venere, Cupido e Marte、英: Venus, Cupid and Mars)は、イタリア・バロック期の巨匠グエルチーノが1633年にキャンバス上に油彩で制作した絵画である。グエルチーノがエステ家の人物の肖像画を描くためにサッスオーロに滞在していた時期に、フランチェスコ1世・デステがサッスオーロ・ドゥカーレ宮殿を装飾するために1632–1633年に委嘱した[1]。作品は現在、モデナのエステンセ美術館に所蔵されている[2][3]。
作品
ヴィーナスはほとんどトロンプ・ルイユの手法で描かれた右手でキューピッドに指図をし、キューピッドはこちらに向かって矢を放とうとしている[2]。鑑賞者に向かって伸ばされるように描かれたヴィーナスの手とキューピッドの弓は絵画に「本物らしさ」を与え、鑑賞者は画中に誘われることになる[3]。そして、自身を絵画の依頼者フランチェスコ1世と同一視するのである。背景では、マルスがこの光景を見出したところであり、芸術世界が現実世界に侵入してくる感覚を強調している[2]。
この絵画に対する最後の支払いは、1634年1月18日になされた。グエルチーノは、エステ家の宮廷侍従チェーザレ・カヴァッツァ (Cesare Cavazza) から残額126スクード相当を受け取っている。なお、最初にグエルチーノに支払われた額は知られていないが、約30スクードであったと思われる[1]。グエルチーノの伝記作者カルロ・チェーザレ・マルヴァージアは本作をグエルチーノが1634年に描いた最初の絵画であるとし、「モデナの紳士のために制作され、その地の最も穏やかな[公爵]に贈るためのキャンバス画、ヴィーナス、彼女の横に座る射手キューピッド、そしてマルスを表している」と述べている[1]。1633年11月のグエルチーノからカヴァッツァへの文書は当時公爵のために制作中の絵画に触れており、絵画をすぐに仕上げ、同年のクリスマス前に渡すことを望んでいると記されている。支払いの日付を考えれば、おそらくその通りになったと考えられる[1]。
本作は、1692-1694年の間にサッスオーロ・ドゥカーレ宮殿の「カーメラ・デイ・ソーニ (Camera dei Sogn=夢の間)」にあったことが記録されている[1]。フランチェスコ3世・デステは一家のコレクションの大半を1745-1746年にアウグスト3世 (ポーランド王) に売却した後、本作をモデナに移した[4]。ナポレオン戦争中の1746年にはフランス軍が作品を略奪したが、1815年にエステ家のコレクションに戻った。
脚注
- ^ a b c d e ISBN 9788877792846, p. 212. P. Bagni, D. De Grazia, D. Mahon, F. Gozzi and A. Emiliani, Giovanni Francesco Barbieri Il Guercino 1591-1666, a cura di Denis Mahon, Bologna, Nuova Alfa Editoriale, 1991,
- ^ a b c “Venere, Cupido e Marte”. エステンセ美術館公式サイト (イタリア語の英訳). 2025年4月8日閲覧。
- ^ a b 『グエルチーノ展 よみがえるバロックの画家』、2015年、26頁。
- ^ Venere, Marte e Amore”. Gallerie Estensi (2021年9月3日). 2022年8月23日閲覧。 “
参考文献
- 『グエルチーノ展 よみがえるバロックの画家』、国立西洋美術館、ボローニャ文化財・美術館特別監督局、チェント市、TBS、2015年刊行 ISBN 978-4-906908-12-7
外部リンク
- ヴィーナスとキューピッド、マルスのページへのリンク