激しいタッチと色彩(アルル)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/04 00:20 UTC 版)
「フィンセント・ファン・ゴッホ」の記事における「激しいタッチと色彩(アルル)」の解説
この項目では色を扱っています。閲覧環境によっては、色が適切に表示されていない場合があります。 単純で平坦な色面を用いて空間を表現しようとする手法は、クロー平野を描いた安定感のある『収穫』などの作品に結実した。しかし、同じアルル時代の1888年夏以降は、後述の補色の使用とともに荒いタッチの厚塗りの作品が増え、印象派からの脱却とバロック的・ロマン主義的な感情表出に向かっている。ファン・ゴッホは、「結局、無意識のうちにモンティセリ風の厚塗りになってしまう。時には本当にモンティセリの後継者のような気がしてしまう。」と書き、敬愛するモンティセリの影響に言及している。図柄だけではなく、マティエール(絵肌)の美しさにこだわるのはファン・ゴッホの作品の特徴である。 ファン・ゴッホの表現を支えるもう一つの要素が、補色に関する色彩理論であった。赤と緑、紫と黄のように、色相環で反対の位置にある補色は、並べると互いの色を引き立て合う効果がある。ファン・ゴッホは、既にオランダ時代にシャルル・ブランの著書を通じて補色の理論を理解していた。アルル時代には、補色を、何らかの象徴的意味を表現するために使うようになった。例えば、「二つの補色の結婚によって二人の恋人たちの愛を表現すること」 を目指したと書いたり、『夜のカフェ』において、「赤と緑によって人間の恐ろしい情念を表現しよう」 と考えたりしている。同じアルル時代の『夜のカフェテラス』では、黄色系と青色系の対比が美しい効果を生んでいる。
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