漸近値
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/16 01:57 UTC 版)
「定数でない整函数が、適当な領域において有限な漸近値をもつことがあるか、常に有限な極限を持つかの何れであるか」を問題にすることができる。リウヴィルの定理により、任意の方向において有限な漸近値を持つということが不可能であることは既知である。f が漸近値を許すとは、適当な方向の経路が存在して s がその経路に沿って無限大に発散するとき f(s) が値 a に収束するときに言う(そのような経路は「a の決定路」(chemin de détermination a) と呼ぶ)。したがって定数でない任意の整函数は、少なくとも一つ ∞ の決定路を持つ。 増大度が 1/2 より小さい整函数 f に対しては、原点中心かつ半径が限りなく大きくなる無限個の円が存在して、その上での f の最小絶対値は無限大に発散する。したがって、増大度が 1/2 より小さい整函数に対しては、有限な漸近値は存在しない。実はワイマンは以下の定理を示した: 定理 (Wiman) 増大度 ρ < 1/2 かつ精密増大度 ρ(r) の整函数 f に対して、ε > 0 は任意として、不等式 ln | f ( s ) | > ( cos ( π ρ ) − ϵ ) r ρ ( r ) {\textstyle \ln |f(s)|>(\cos(\pi \rho )-\epsilon )r^{\rho (r)}} が、無限大に発散する半直線に沿って分布する無限個の円上で成り立つ。したがって、それらの円上で ln | f ( s ) | > ( cos ( π ρ ) − ϵ ) ln M ( r ) {\displaystyle \ln |f(s)|>(\cos(\pi \rho )-\epsilon )\ln M(r)} である。 いま、整函数が二つの値 a, b の決定路を持つとすれば、それら二つの決定路に挟まれた領域に ∞ の決定路が存在するか、あるいは a = b であって二つの決定路に挟まれた無限大へ向かう任意の経路が a(したがって b)の決定路となる。 ダンジョワは有限増大度 ρ の整函数は高々 2ρ 個の漸近値を持つと予想した。この予想はアールフォルスの定理(英語版)となった。 したがって、0 から無限大を結ぶ異なる漸近値を導く直線が ρ 本よりも多く存在することは不可能である。結果としてそのような二直線のなす角は π/ρ 以上である。
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