湿式法の構造
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/01 06:40 UTC 版)
支持体(壁芯) 普通は煉瓦や石を組んだ壁などを支持体とする。葦などを編んだカンニッチョとよぶ支持体を用いる場合もある。 荒下地(トルリザチオ trullisatio) 支持体の壁面を水で良く洗い充分湿らせてから、粗い川砂と消石灰の漆喰を壁に投げつけるように塗り付ける。 中間層(アリッチョ arriccio) トルリザチオを乾かし(通常一週間程度)、トルリザチオを水で充分湿らせ、川砂と消石灰による漆喰を塗る。 下絵(シノピア sinopia) 中間層に、水で溶いたシノピア、ヴェルダッチョなどの顔料による下絵を描く。下絵を描く目的は全体像を確認するとともに、ジョルナータの区分を明確にすること。この層は完全に次の層に被われるため顔料の定着に留意する必要はない。そのため区分せず全画面は一度に描かれる。また次の漆喰層の定着のために下絵完成後、表面にケガキで筋状の傷を付けることが多い。原寸大の紙に描かれた下絵(カルトーネ cartone)を漆喰に転写する方法には、壁の上に重ねたカルトーネの上を尖ったものでなぞるけがき法(インチジオーネ incisione)と、カルトーネに針で穴を開け、その穴から顔料を透過させる方法(スポルベロ spolvero)とがある。 中世期にはこの下絵層を指す言葉は存在しなかった。「シノピア」と呼ばれるようになったのは、修復過程で下絵層の即興的描画の美術史的価値と芸術性が注目された20世紀以降である。 上塗り=描画層(イントナコ intonaco) ジョルナータ分の漆喰を強く塗り、表面を平らに仕上げる。漆喰層がしまってきたら水または石灰水で溶いた顔料で描き始める。 漆喰が乾くと顔料の表面が炭酸カルシウムの皮膜で覆われるため、最終層の漆喰は一日で描けるだけのもの(ジョルナータ分)を準備し、素早く描かなければならないため相応の技術と経験が必要となる。
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