流動性に関する議論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/06 09:39 UTC 版)
セクシュアリティは人生を通して安定しているのか、流動的なのか。これについては、現在も重要な議論が行われている。科学的コンセンサスとしては、基本的に性的指向は選択できるものではないとされている。一般的に性的指向が変化することはなく、通常は安定していると考えられている 。しかし性的アイデンティティは、個人の生涯を通じて変化することがありうるし、必ずしも生物学的な性や性行動、実際の性的指向がそれぞれ一貫しているとは限らない。性的指向を発達させる正確な原因についてはいまだ議論の一致はないが、遺伝的、ホルモン的、社会的および文化的影響が考えられている。性的指向の発達は遺伝的、ホルモン的および環境的な影響の複雑な相互作用によって引き起こされると考えられている 。 性的流動性の文脈においては、性的指向と性的欲望が基本的に生物学的であり、したがって生涯を通じて変わらない、と信じる立場を本質主義と呼ぶ。Savin-Williams, Joyner and Rieger(2012)による大規模な縦断的研究の結果、性的指向に関するアイデンティティは安定している場合の方が、変化している場合よりも一般的であり、特に男性についてはその傾向が強いことが判明した。確かに性的指向は安定していることが一般的であるかもしれないが、それでも性的指向に関するアイデンティティが変化する人も存在する。また多くの研究で、女性のセクシュアリティは男性のセクシュアリティよりも流動的であると示されている。この理由として、女性の方がより性的可塑性が高いという説や、あるいは女性を(男性よりも)変化しやすい存在として社会化するような文化的・社会的要因があるという説が考えられている。性的指向に関するアイデンティティの安定性について性差があるため、男性と女性のセクシュアリティは同じ仕組みで機能するものとしては扱われない。サブグループ(バイセクシュアル、レズビアン、ゲイなど)の性的指向の流動性については、さらなる研究が必要とされている。 原語である”sexual fluidity”という語は、リサ・ダイアモンド(英語: Lisa M. Diamond)によって導入されたものであり、後述のように特に女性のセクシュアリティに関する研究から提起された言葉である。
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