治療と薬剤開発
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/08 16:18 UTC 版)
現在のところ、ラミノパシーには治療法が存在せず、大部分は対症療法と支持療法である。理学療法と整形外科的治療は筋ジストロフィーを抱える患者には有用である。心筋が影響を受けるラミノパシーでは心不全が引き起こされる可能性があるためACE阻害薬、βブロッカー、アルドステロン拮抗薬などの投与が必要であり、不整脈が頻繁に起こるため心臓ペースメーカーや植え込み型除細動器が必要となる場合がある。ニューロパシーに対する治療としては、てんかん発作や痙縮に対する投薬が行われる。 近年の進展によって、ラミノパシーにおいて早老をもたらす有毒なプロジェリンが形成される分子機構が解明され、標的治療の開発の可能性が開かれた。プレラミンAとその病理型であるプロジェリンに対するファルネシル化は、ファルネシル基転移酵素(英語版)によって行われる。ファルネシル基転移酵素阻害剤(英語版) (FTI) は2つのマウスモデルにおいて効果的にプロジェリアの症状を低減し、早老症の培養細胞では異常な形状を示していた核が回復した。2種類の経口FTIであるロナファルニブ(英語版)とティピファルニブ(英語版)がすでに抗がん剤として利用されており、ラミノパシーに苦しむ子供に対する治療の道筋となる可能性がある。骨粗鬆症の治療に使用される窒素含有ビスリン酸薬剤はファルネシル二リン酸の産生を減少させ、それによってプレラミンAのファルネシル化を減少させる。これらの薬剤もプロジェリアの治療に有用である可能性がある。プロジェリンの合成を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドの利用も、現在行われている抗プロジェリン薬剤開発の別の道筋である。
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