氷河の浸食作用による擦痕
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/07/15 13:55 UTC 版)
氷食作用の一種である削磨作用によって生じる擦痕は氷河擦痕または氷食擦痕と呼ばれ、氷河の底部に取り込まれた岩塊と、氷河側面の岩盤あるいは基盤岩の表面とがこすれ合うことによってできる。細粒で硬い性質の岩石に残りやすい。基盤岩表面の擦痕は氷河の流れる向きに平行に刻まれるため、当時の氷河の進んだ方向を特定することができる。また、その際上流方向ほど溝は深く明瞭になっていることが多い。 長さは数センチメートル程のものから1メートル以上のものもあり、幅・深さは約1〜2ミリ程度である。さらに広く深い溝を持つものは条溝、氷河溝(glacial striae)と呼ばれている。 より細かい擦痕はひっかき傷(scratches)として区別され、直線状のものだけでなく曲線を示すものもある。これらは氷河底部の岩屑に直接傷つけられたものではなく、岩屑と基盤岩の間に挟まれた細かい砂や粒子によって着けられる。細粒物質によって滑らかに磨かれた基盤岩の表面には無数の細かな擦痕が確認でき、氷食作用によって作られる羊背岩の研磨面にもその特徴を見ることができる。中には顕微鏡でしか確認できない程の細かいものもある。 先述したとおり、基盤岩表面に刻まれた氷河擦痕の一般的方向は当時の氷河の流動方向を特定、復元するための情報源であり、平面上に交差する擦痕がそれぞれいつ形成されたのかを知ることで、氷河の進出期の新旧や時代ごとの流動方向の違いを比較することも行われている。しかし、氷河擦痕とそれ以外の要因によって生じた擦痕と区別することは困難な場合が多く、擦痕の情報のみで氷河によるものであると特定してしまうことは危険である。
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