水素原子の輝線スペクトル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/18 17:20 UTC 版)
「ボーアの原子模型」の記事における「水素原子の輝線スペクトル」の解説
ボーアの原子模型は水素原子の輝線スペクトルに関する実験結果を説明することができる。 水素原子は陽子と電子で構成される2体系であるが、陽子の質量は電子に比較して圧倒的に大きいため、陽子は原点に固定されているものとして取り扱う。水素原子中において、電子はクーロンポテンシャル U = − k r ; k = Z 0 c 4 π e 2 {\displaystyle U=-{\frac {k}{r}};~k={\frac {Z_{0}c}{4\pi }}\,e^{2}} の下で運動する。定常状態にある電子は、仮定により、古典力学に従って楕円軌道をとる。定常状態における系のエネルギーを E とすれば、軌道長半径と軌道周期は a = − k 2 E {\displaystyle a=-{\frac {k}{2E}}} T = π k ( − E ) 3 / 2 m e 2 {\displaystyle T={\frac {\pi k}{(-E)^{3/2}}}{\sqrt {\frac {m_{\text{e}}}{2}}}} で表される。電子の軌道が円軌道であるとき、電子の周回速度は v = 2 π a T = − 2 E m e {\displaystyle v={\frac {2\pi a}{T}}={\sqrt {\frac {-2E}{m_{\text{e}}}}}} となる。 ボーアの量子条件より、量子数 n に対して m e v n a n = k m e − 2 E n = n ℏ {\displaystyle m_{\text{e}}v_{n}a_{n}=k{\sqrt {\frac {m_{\text{e}}}{-2E_{n}}}}=n\hbar } であり、対応するエネルギー準位が E n = − m e k 2 2 ℏ 2 1 n 2 {\displaystyle E_{n}=-{\frac {m_{\text{e}}k^{2}}{2\hbar ^{2}}}{\frac {1}{n^{2}}}} と求められる。この式から判るように、量子数 n が大きいほどエネルギー準位は高い。 ここで量子数 n から n' への定常状態の遷移を考える。n > n' とすると、エネルギー準位の高い状態から低い状態への遷移であり、このときに放出される光の周波数は、振動数条件より h ν = E n − E n ′ = m e k 2 2 ℏ 2 ( 1 n ′ 2 − 1 n 2 ) {\displaystyle h\nu =E_{n}-E_{n'}={\frac {m_{\text{e}}k^{2}}{2\hbar ^{2}}}\left({\frac {1}{n'^{2}}}-{\frac {1}{n^{2}}}\right)} である。放出される光の波長で表せば 1 λ = E n − E n ′ h c = m e k 2 4 π ℏ 3 c ( 1 n ′ 2 − 1 n 2 ) {\displaystyle {\frac {1}{\lambda }}={\frac {E_{n}-E_{n'}}{hc}}={\frac {m_{\text{e}}k^{2}}{4\pi \hbar ^{3}c}}\left({\frac {1}{n'^{2}}}-{\frac {1}{n^{2}}}\right)} となり、バルマー系列などの水素原子の輝線スペクトルの関係式と同じ形の式が得られる。比例係数は R ∞ = m e k 2 4 π ℏ 3 c = Z 0 2 c m e e 4 8 h 3 {\displaystyle R_{\infty }={\frac {m_{\text{e}}k^{2}}{4\pi \hbar ^{3}c}}={\frac {Z_{0}^{2}cm_{\text{e}}e^{4}}{8h^{3}}}} である。物理定数から計算されるこの比例係数の値は、水素原子のスペクトルの観測から得られたリュードベリ定数と見事に一致し、ボーアの模型の正しさが実証された。
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