極嚢に関する議論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/17 13:52 UTC 版)
20世紀半ばの体系の一例亜門綱亜綱胞子虫Sporozoa 晩生胞子虫Telosporea 簇虫 Gregarinidia 球虫 Coccidia 血虫 Haemosporidia 無極嚢胞子虫Acnidosporea 略胞子虫 Haplosporidia 住肉胞子虫 Sarcosporidia 極嚢胞子虫Cnidosporea 粘液胞子虫 Myxosporidia 放線胞子虫 Actinomyxidia 微胞子虫 Microsporidia らせん胞子虫 Helicosporidia 粘液胞子虫の胞子が持つ極嚢(きょくのう)は、極糸(polar filament)という長い糸が螺旋状に入った袋状のもので、見かけは刺胞に似た極めて特徴的な構造である。そのため、20世紀初頭から極嚢(というよりはむしろ極糸)の有無を分類に用いる意見があり、次第に極嚢胞子虫類(Cnidosporidia Doflein, 1901)という分類群が受け入れられるようになった。粘液胞子虫の胞子が極嚢を含む複数の機能分化した細胞から成っていることから中生動物のような中間的な生物だと考える向きもあり、極嚢胞子虫は胞子虫とは全く別系統の生物だと認識されるようになった。 1960年代になると、粘液胞子虫や放線胞子虫の極糸はただ宿主の消化管壁へ付着するためだけの機能であるのに対し、微胞子虫の極糸は宿主細胞への進入経路として使われることから、これらを相同と見なすべきでないという批判がされるようになった。この立場から微胞子虫の極糸は極管(polar tube)と呼んで区別され、次第に微胞子虫と粘液胞子虫とを分けて考えるようになる。 なお表中にあるらせん胞子虫は、Helicosporidium parasiticum Keilin, 1921という1種のみを指す語である。これは極糸のような螺旋状の構造を持つが極嚢と呼べる構造を持たない特異な寄生生物であり、1931年に一旦は極嚢胞子虫類に含められたが、1970年以降は下等な菌類だと見なされたり位置不詳とされたりするようになった。21世紀に入ってから培養が可能になり、分子系統解析の結果トレボウクシア藻綱の緑藻プロトテカ(Prototheca)属と極めて近縁な寄生藻類であることが判明した。
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