根鰓亜目とは? わかりやすく解説

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こんさい‐あもく【根鰓亜目】


根鰓亜目

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/17 04:17 UTC 版)

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根鰓亜目
ウシエビ Penaeus monodon
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 軟甲綱 Malacostraca
: 十脚目 Decapoda
亜目 : 根鰓亜目 Dendrobranchiata
学名
Dendrobranchiata Bate1888

根鰓亜目(こんさいあもく、学名 Dendrobranchiata)は十脚目を2分する亜目の1つ。クルマエビ亜目とも呼ばれる。

もう一つの分類群・抱卵亜目より祖先的とされている。かつて十脚目は外見上の違いから、長尾亜目(エビ)・短尾亜目(カニ)・異尾亜目(ヤドカリ類ヤドカリタラバガニなど)に分けられていたが、クルマエビ亜目は全て旧長尾亜目(エビ)に含まれる。

特徴

成体のは細かく枝分かれした羽毛状の構造で、根鰓(こんさい)dendrobranch と呼ばれ、分類名もここに由来する。ただしユメエビ類の成体は鰓が無い。成体の大きさは数mmほどのユメエビ類 Lucifer から、30cmを超えるウシエビ Penaeus monodon、オオミツトゲチヒロエビ Aristaeopsis edwardsiana まで大きな差がある。

生殖腺はオスの第5歩脚基部、メスの第3歩脚基部にある。また、オスの第1腹肢内側には雄性生殖器petasma : ペタスマ、ペタズマとも)、メスの第4・第5歩脚の内側に雌性生殖器(thelycum : セリカム)がある。特に多くの種を抱えるクルマエビ科同定する際は、生殖器の形状は重要な手がかりとなる[1][2][3]

生活史

クルマエビ亜目は受精卵を保護せず水中に放出し、放出された受精卵はプランクトンとして水中を浮遊しながら発生する。卵を保護しない分は小卵・多産で個体数をカバーする傾向があり、一般的にエビ亜目よりも一度の産卵数が多い。大型種のクルマエビでは産卵数が数十万に達する。また、子が卵から孵化する段階ではノープリウス幼生の形態である(エビ亜目はそれより一段階進んだゾエア幼生、または直達発生で孵化)。

幼生プランクトンとして海中を遊泳し、脱皮を繰り返しながら

  1. ノープリウス nauplius
  2. プロトゾエア(前期ゾエア)protozoea
  3. ゾエア zoea
  4. ポストラーバ postlarva(マスティゴプス mastigopus

の4段階の変態を経て稚エビになる。なおクルマエビ科のゾエア期をミシス mysis、サクラエビ科のプロトゾエア期をエラホカリス elaphocaris、同じくサクラエビ科のゾエア期をアカントソーマ acanthosoma と呼ぶこともある[2]

分類

2上科9科が分類され、うち2科は化石種のみで構成される[4]ジュラ紀の地層から化石が発見されている。主に熱帯・温帯の浅海から深海に分布する。原則として生だが、中には汽水域に生息するもの、さらには淡水域まで進入するものもいる。

下位分類群の和名、ラテン語名、記載者、記載年、おもな種類を以下に示す[1][2][3][4]

サクラエビ上科

Sergestoidea Dana, 1852

大きさは体長数mm-数cm程度だが、10cmを超えるオオサクラエビ Sergia tenuiremis (Krøyer, 1855) という種類もいる。5対の歩脚のうち後ろの第4・第5歩脚が退化している。海中を群泳する習性を持ち、生息海域は外洋・内湾、深海・表層など種類によって異なる。地域や種類によっては食用に漁獲される。

ユメエビ科 Luciferidae De Haan1849
ユメエビ属 Lucifer のみ、8種が分類される。成体は小型で鋏脚が第3歩脚のみ、鰓も無い。プランクトン中に見いだされる。
サクラエビ科 Sergestidae Dana1852
およそ20属100種。第二触角が長く、中ほどで一度折れ曲がる。サクラエビ、オオサクラエビ、アキアミなど。他に化石属が2属ある。

クルマエビ上科

Penaeoidea Rafinesque-Schmaltz, 1815

大きさは体長数cmほどのものから20cmを超えるものまで種類によって異なる。5対の歩脚はいずれもよく発達する。漁業資源となるものが多い。

次の2科は化石種のみが知られる[5]

以下に現生種を含む科を示す[5]

クルマエビ科 Penaeidae Rafinesque-Schmaltz, 1815
約25属200種。底生で、浅海から水深数百mまでの深海まで生息する。種類によっては汽水域や淡水域に進入する。25属の化石属があり、数十種が発見されている。
クルマエビウシエビクマエビシバエビヨシエビサルエビアカエビシロエビ、ホッコクエビなど
イシエビ科 Sicyoniidae Ortmann1898
イシエビ属 Sicyonia のみ53種からなる。太く短い体型で棘や毛が多い。底生で、浅海から深海まで生息する。イシエビ、ヤマトイシエビ、サルイシエビなど。化石種が1種ある。
クダヒゲエビ科 Solenoceridae Wood Mason, 1891
約10属90種。深海底生。第1触角鞭2つのうち片方が角状に発達するものが多い。ヒゲナガエビナミクダヒゲエビ、ヒゲナガクダヒゲエビなど。
チヒロエビ科 Aristeidae Wood Mason, 1891
約10属30種。現生種は水深数百-数千mの深海底に生息する。ツノナガチヒロエビ、ヒカリチヒロエビなど。化石種が1属1種ある。
オヨギチヒロエビ科 Benthesicymidae Wood Mason, 1891
約4属40種。深海に生息する。中層遊泳性で、日周鉛直運動を行うものが多い。ソコチヒロエビ、シンカイエビなど。化石種が1種ある。

系統

現生種に関しては次のような系統樹が得られている[6]ユメエビ科はこの系統解析に含まれておらず、現在でもその系統的位置は不確定である。

サクラエビ科

クルマエビ科(イシエビ科を含む)

クダヒゲエビ科

チヒロエビ科

オヨギチヒロエビ科

参考文献

  1. ^ a b 内海冨士夫・西村三郎・鈴木克美『エコロン自然シリーズ 海岸動物』1971年発行・1996年改訂版 ISBN 4586321059
  2. ^ a b c 三宅貞祥『原色日本大型甲殻類図鑑 I』1982年 保育社 ISBN 4586300620
  3. ^ a b 林健一『日本産エビ類の分類と生態 I 根鰓亜目』1992年 生物研究社 1992年 ISBN 4915342077
  4. ^ a b De Grave, Sammy; Pentcheff, N. Dean; Ahyong, Shane T.; et al. (2009), “A classification of living and fossil genera of decapod crustaceans”, Raffles Bulletin of Zoology Suppl. 21: 1–109, https://hdl.handle.net/10088/8358 
  5. ^ a b CAROLINA TAVARES AND JOEL W. MARTIN. “SUBORDER DENDROBRANCHIATA BATE, 1888”. 2015年1月31日閲覧。
  6. ^ Ma, K. Y., T-Y. Chan, and K. H. Chu. (2009). “Phylogeny of penaeoid shrimps (Decapoda: Penaeoidea) inferred from nuclear protein-coding genes”. Molecular phylogenetics and evolution 53 (1): 45-55. 

根鰓亜目

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 23:48 UTC 版)

エビ」の記事における「根鰓亜目」の解説

詳細は「クルマエビ亜目」を参照 クルマエビ亜目とも呼ばれるメス受精卵を腹肢に抱かずそのまま水中放出する。卵は水中浮遊しながら発生し幼生期プランクトンとして生活するクルマエビ上科 PenaeoideaAegeridae † チヒロエビ科 Aristeidae オヨギチヒロエビ科 Benthesicymidae Carpopenaeidae † クルマエビ科 Penaeidae - クルマエビウシエビブラックタイガー)、シバエビ など イシエビ科 Sicyoniidae - イシエビ など クダヒゲエビ科 Solenoceridae - ヒゲナガエビ など サクラエビ上科 Sergestoideaユメエビ科 Luciferidae サクラエビ科 Sergestidae - サクラエビアキアミなど

※この「根鰓亜目」の解説は、「エビ」の解説の一部です。
「根鰓亜目」を含む「エビ」の記事については、「エビ」の概要を参照ください。

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