柊の花ちらほらと寺は留守
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季 語 |
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季 節 |
冬 |
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評 言 |
境内は、例年にない猛暑から短い秋を過ぎ松の木は剪定され何事もなかったかのように、初冬――。 柊は葉脇に小さな花を束生し、香を放つ。ひとつ深呼吸をして庫裏の呼鈴を鳴らす。白いしろい花を見つめつつ暫く待つ。ああ~留守なんだ。前もって連絡するべきだった。住職と話し、底冷えの本堂で合掌し、住職が入れてくれる煎茶にふう~と心がゆるむ。その何よりの時は消えた。 いつかまた訪ねることにして、ちちははの墓へ回る。 そんな思い入れが過不足なく伝わるのは眼前を切り取った単なるリアリズムに終らせず、結句“寺は留守”の措置、それが見せ場となった。まるで映画監督がOK! を出したような雰囲気が漂う。まわりが加速してゆく中でいきなりでもいい、寺へゆけばいいじゃないか。 野木氏は、1966年より名取思郷に師事。1989年「あすか賞」受賞。1994年「あすか」主宰継承。句集に、三人句集『新樹光』(1965年)『夏蝶』(1986年)『君は海を見たか』(1997年)『時を歩く』(2003年)他。 俳誌「あすか」創刊45周年記念出版『野木桃花の世界』(2009年)の【帯】は村上譲氏。頁には、櫻井辰雄氏の【「書」のなかの桃花俳句】・青山澄男氏の【桃花俳句を読む】がある。 今日の秋刀魚こげすぎており父が焼く 窓ぎはのすみれいちにち海のいろ 望郷のゴリラに五月来たりけり 花八ツ手ぽんぽんぽんと晴れ渡る はなびらの非日常を抜けてゆく やさしさのすり減ってゆく夏帽子 地球儀の海が傾く日雷 写真は柊の花SKB劇場!SEASAR'S GARDEN 2 |
評 者 |
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備 考 |
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