本国・従属国統治
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/19 10:23 UTC 版)
従属国をもつ王国は、王が本国を統治し、息子や腹心を下王に任じて従属国を統治させた。王といえども従属国内にひとたび入ると、下王の命令に従わなければならなかった。たとえばエゼルウルフがケント下王だったとき、エグバートはケントにいる時は息子エゼルウルフの命を仰いだ。ウェセックス王に即位したエゼルウルフは、この方式を改めて集権化につとめた。従属国の貴族に直接金品を下賜したり、本国・従属国全体で使われる硬貨はエゼルウルフの肖像を刻印したのは、王はあくまでウェセックスのエゼルウルフであると印象づけるためだった。下王はそれまで、自分の名で令状を出したり、従属国内では自分の貨幣を流通させていたが、エゼルウルフ時代にはこれがみられなくなっていた。 土地政策でもエゼルウルフ時代には、その所有形態に変化がみられた。従来の土地所有は土地税がかかるうえに、複数の子に分けるときなどに分割できない制度になっていた(慣習保有地)。新しく出て来ていた勅許保有地は、王がひとたび勅許を出せば、その後売買・譲渡などが自由にできたうえ、税もかからなかった。エゼルウルフは勅許保有地への転換をいっきょに進めた。当時の貴族は競って教会に金品を寄進していたので、この転換で収入の増えた貴族に支持されただけでなく、教会からも信頼された。このことがきっかけで、敵味方がはっきりしない国境付近の有力者たちもエゼルウルフのウェセックスになびいた。歴史的には勅許保有地化政策は、イングランドが封建化する転換点ともなった。
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