有理数体上での記述
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/16 01:08 UTC 版)
「多項式の内容と原始多項式」の記事における「有理数体上での記述」の解説
内容–原始成分分解は以下のように有理係数にまで拡張できる。 与えられた有理係数多項式 P に対しそのすべての係数の共通分母(英語版)(最小公分母)d を用いて P = Q d {\displaystyle P={\frac {Q}{d}}} と書けば、ここに Q は整係数多項式となる。P の内容は Q の内容を d で割った商 c ( P ) := c ( Q ) d {\displaystyle c(P):={\frac {c(Q)}{d}}} として与えられ、P の原始成分は Q の原始成分そのもの: pp ( P ) := pp ( Q ) {\displaystyle \operatorname {pp} (P):=\operatorname {pp} (Q)} として与えられる。 さてこの定義が共通分母 d のとり方に依存しないことは確認すべき事項であるが、それは容易である。また内容–原始成分分解 P = c ( P ) pp ( P ) {\displaystyle P=c(P)\operatorname {pp} (P)} はこの設定の下でも依然有効である。 さてこれにより、有理係数の任意の多項式が一意に定まる整係数原始多項式に同伴となることが従う。この原始多項式はユークリッドの互除法によって計算できる。 重要な帰結の一つとして、有理係数の範囲での多項式の因数分解は整係数の範囲での因数分解に同値になることが挙げられる。整係数多項式よりも体上の多項式のほうがはるかに一般的であるから、一見してこの同値性は整係数多項式の分解に利用する方に意味がありそうにも思えるが、実はそれは反対である。すなわち、有理係数多項式の因数分解の効果的なアルゴリズムは、適当な素数 p を法とする有限体上での問題に帰着するために、この同値性を用いて整係数での因数分解に帰着する方法を用いる。 この同値性を多項式の最大公約数の計算に用いることもできる。互除法は有理数係数の多項式に対して定義できるから、それを直接用いればよいのだけれども、実はこの場合には多くの係数を簡約形(既約分数)にしておかなければ互除法がうまく回らないから、整係数多項式に対する互除法の計算よりも非常に重たい計算を強いられることになるのである。(多項式の最大公約数(英語版)の項を参照)。
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