既判力の客観的範囲
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/02 08:29 UTC 版)
確定した終局判決のうち既判力が発生する部分は、原則として、訴訟の目的となった権利関係についての判断、すなわち主文に包含される判断のみである(民事訴訟法114条1項)。例えば、貸金返還請求訴訟で、判決の理由中で被告が既に貸金を返還した事実を認定した上で、原告の請求を棄却する旨の判決が確定した場合、既判力が生じるのは原告の被告に対する貸金返還請求権がないという判断についてのみであり、被告が既に貸金を返還しているという認定には既判力は生じない。 理由中の判断に既判力を認めないのは、一般的に、訴訟当事者の攻撃防御方法の選択についての弾力性を確保するためと説明されている。上記の訴訟の場合、被告の他の争い方としては、貸金契約の不成立、あるいは消滅時効なども考えられ、どれか一つが認められれば被告の目的は達成する。これらの攻撃防御方法は被告としては訴訟に勝つための手段としての意味しかないにもかかわらず、既判力を認めると、当事者としては結論のみを考えて訴訟活動をすることができなくなり、攻撃防御方法の選択の弾力性を失うことになる。 ただし、理由中の判断であっても、請求の成立又は不成立の判断をするに際し、被告から提出された相殺の主張の可否について判断をした場合は、その主張された額について既判力が生じる(同法114条2項)。それ以外の理由中の判断には既判力は及ばないが、学説上は、当事者が訴訟における主要な争点とした場合は、理由中の判断であっても拘束力を認めるべきとの見解が主張されている(争点効)。 なお、判例上は、訴訟物に準じて審判対象となる事項については既判力に準じた効力が生じるとされる。
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